乳腺外科

外来診療担当表
診療内容・特色

 当科は日本乳癌学会認定施設です。治療指針としては、日本乳癌学会診療ガイドライン、St.Gallenコンセンサス、NCCNガイドラインなどを基本として、京都府立医科大学附属病院内分泌・乳腺外科と連携をとり、乳がんを主とした様々な乳腺疾患の診断・治療にあたっています。
 今や乳がんは日本人女性の11人に1人が罹患するともいわれ(2018年 統計より)、女性が生涯に罹患するがんの第一位です。(グラフ1:年齢階級別罹患率)。しかし、早期に発見し治療を受けていただければ、非常にコントロールのよいがんの一つです。
 一方で、検診受診率が伸び悩んでいることは非常に残念なことですが「マンモグフィは痛い」「忙しい」「受診しづらい」「何か見つかったらどうしよう」といった患者さんの不安も十分に理解できます。皆さんと相談しながら、検診を受けることで安心していただき、乳がんの早期発見・治療に努めたいと思います。
 また、乳がんは乳房のみの疾患ではありません。全身への影響(転移・再発)を考慮に入れて、「個別化治療=オーダーメイド治療」と言われるように個々の患者さんの病態(乳がんの性質、遺伝子変異の有無など)を把握して、効果のある治療(薬物療法・手術・放射線療法など)を全身治療と局所治療のバランスを取りつつ患者さんのご希望も踏まえながら、一緒に乗り越えていくお手伝いをします。
 そのためには、乳がんは単科(乳腺外科のみ)で完結できる治療内容ではなく、「チーム医療」と言われていますので、当院他科のみならず関連施設と連携して治療を提供します。

年齢階級別罹患率

乳がんのチーム医療

乳がんのリスク

女性ホルモンとの関連

初経年齢が早い、閉経年齢が遅い、閉経後の肥満、更年期障害などの治療で長期ホルモン補充療法を受けている、など。

生活習慣

喫煙、飲酒習慣など

遺伝子変異

遺伝性乳癌卵巣癌、Li-Fraumeni症候群など

乳がんの症状

・しこり
・皮膚の異常(発赤、びらん、ひきつれなど)
・乳頭陥没(最近になって)などの形態変化
・乳頭からの異常分泌物(特に血性)
・腋窩のしこり、上肢の浮腫
・痛み              など

Breast Awareness ブレスト・アウェアネス

近年、「Breast Awareness ブレスト・アウェアネス」=「乳房を意識する生活習慣」の重要性が注目されています。これは、特に女性が乳房の状態に日頃から関心をもつことで、ご自身の乳房変化に気づき、速やかに受診されることがねらいです。そして、生涯を通じて、"健康で明るく充実した生活"を送るために必要な生活習慣を身に着ける、健康教育の一つです。
ブレスト・アウェアネスとしては4つの基本行動が提唱されています。

①乳房の状態を知ること

自分に関心を持ちましょう。自己触診(見て、触る)や痛みを感じるなど。

②乳房の変化に気づくこと

自分の乳房の"いつもの状態"を知りましょう。しこり、血性乳頭分泌、皮膚の引き連れなど。

③乳房の変化に気づいたら、
医療機関を受診すること

受診をためらわないこと!

④定期的に乳がん検診を
受けること

早期がんは自覚症状がないことが多いです。

40歳以上であればマンモグラフィ検査による検診を受けましょう

当院では長岡京市乳がん検診(予約制)、京都市乳がん検診(予約制)、および健診センターでの健診も行っています。


ただし、以下の方は基本的にはマンモグラフィ検査ができません。
・妊娠中もしくは妊娠の可能性のある方
・心臓ペースメーカーまたはV-Pシャント(脳室-腹腔シャント)、CVポート(中心静脈ポート)を装着されている方
・乳房再建(特に人工物で)をされている方

ブレスト・アウェネスによってできることは、以下のように言われます。
①自分の乳房への関心を高める
②自分の乳がん発症のリスクを把握する
③乳がんにならないように予防する
④乳がん検診の大切さ、利益と不利益を理解する

当院で検診をうけておられなくても結構ですので、もし乳がん検診で異常を指摘された場合や、気になることがあれば乳腺外科を受診してください。また、乳腺疾患は乳がんだけではありませんし、男性でも女性化乳房や乳がんなどを発症し加療が必要となりえます。

当科受診を希望される患者さんやご紹介いただく先生方へ

当院では、毎日女性医師による外来診察および女性技師によるマンモグラフィ撮影をおこない、診察時間の拡充にも努めております。初診の方でもご予約が可能です。また、予約外の当日受診にも可能な限り対応させていただいておりますが、予約の方が優先になりますことをご理解ください。
ご紹介いただく先生方も、予約枠のない日時や緊急受診の調整もいたしますので、地域連携室もしくは直接乳腺外科にご相談ください。

乳がん自己触診

毎月一回はセルフチェックを行いましょう。
閉経後の方は毎月日にちを決めて。閉経前の方は生理開始後1週間ぐらいで、あなたの乳房の張りが一番少ないと感じる日がよいです。

STEP1 鏡の前でチェック

セルフチェック1

腕を高く上げて、ひきつれ、くぼみ、乳輪の変化、乳首のへこみ、湿疹がないかをチェックします。

セルフチェック2

腕を腰に当てて、しこりやくぼみがないかもチェックします。

STEP2 指で触れてチェック

お風呂やシャワーの時に、ボディ―ソープがついた手で触れると乳房の凹凸がよくわかります。

セルフチェック3

4本の指を添えて、指の腹で乳房を押し付けるように触れ、「の」の字を書くように指を動かします。
しこりや硬いこぶ、乳房の一部に硬いところがないかチェックします。

セルフチェック4

同様に脇の下から乳房のまわりも、しこりや硬いこぶ、乳房の一部に硬いところがないかチェックします。

STEP3 分泌物をチェック

セルフチェック5

乳房や乳首をしぼるようにして、乳首から分泌物がでないかチェックします。

乳がんの診断

マンモグラフィ検査

マンモグラフィ検査とは、乳房のレントゲン撮影のことです。乳房専用装置を用いて、圧迫板で乳房をはさみ、乳房内の組織の差を写し出す画像検査です。 撮影は放射線科でマンモグラフィ認定技師の資格を持つ女性技師が行います。

マンモグラフィー検査

超音波検査

超音波検査は、プローブとういう超音波をだすセンサーを乳房にあてて乳房に超音波を当て、その反射波を画像に映し出すことで乳房内部の状態を知ることができます。

超音波検査

細胞診

しこりに針(採血するときぐらいの太さ)を刺して細胞を吸引したり、分泌物を直接採取して、細胞の核の形や大きさなどから良悪性を判断します。

組織診断

局所麻酔を行った上で、皮膚に5㎜程度の切開を入れ専用の針や道具を用いて、調べたい組織を切り取ってきます。出血などのリスクはありますが、確定診断をつけて治療方針を決定するためには不可欠な検査の一つです。

その他、必要に応じて検査を行います。

乳がんの治療

乳がんの治療はがんの性質や病状を把握して、かつ患者さん一人ひとりの価値観や希望にあわせて相談・決定をします。

病状の把握および治療方針の決定

・組織診断:がんの性質(サブタイプ:ホルモン感受性、HER2蛋白発現状態、Ki67など)
・マンモグラフィー検査、超音波検査、MRI検査など:がんの大きさや乳房内での広がり、位置
・CT検査、PET検査、骨シンチ検査など:血行性転移(肺、肝、骨、脳など)や、リンパ節転移の有無
・BRCA遺伝子検査(別項を御参照ください)
・患者さんの希望:妊孕性など           など

手術前の治療(行わない場合もあります)

腫瘍縮小、再発予防、症状緩和や全身コントロールなどを目的に、がんの性質(サブタイプ)や状況(転移の有無など)に応じてご相談・提供します。
・化学療法(抗がん剤治療)
・抗HER2療法
・ホルモン療法  
・CDK4/6阻害薬
・免疫チェックポイント阻害薬    など

手術(行わない場合もあります)

乳房は?
 ・乳房全切除術
 ・乳頭温存乳房全切除術
 ・皮膚温存乳房全切除術
 ・乳房部分切除術
 ・腫瘍摘出術
 ・乳管腺葉区域切除術            など

腋窩リンパ節は?
 ・センチネルリンパ節検査(別項を御参照ください)
 ・腋窩リンパ節郭清

乳房再建術(別項を御参照ください)

手術後の治療(行わない場合もあります)

再発予防、症状緩和や全身コントロールを目的に、手術の結果やがんの性質(サブタイプ)、状況に応じてご相談・提供します。
・化学療法(抗がん剤治療)
・抗HER2療法
・ホルモン療法
・CDK4/6阻害薬
・免疫チェックポイント阻害薬
・放射線療法
・経過観察や定期検査

センチネルリンパ節検査

腋窩リンパ節の中で、最初にがん細胞がたどり着くリンパ節を「センチネルリンパ節検査=みはりリンパ節」といい、ここにがんの転移があるか否かを術中に調べます。転移がなければその先のリンパ節への転移もないと考え、腋窩郭清を省略するという標準治療です。放射性物質や色素などを使用してセンチネルリンパ節を探し出します。

センチネルリンパ節検査

乳房再建術

乳房再建とは、乳がんの手術によって失われた乳房を形成外科の技術を用いて再建することです。もっとも重要なのは乳がんのコントロールですので、100%患者さま御希望に添えるわけではありませんが、メリット・デメリットを御相談しながら適した再建時期と方法を選択していきましょう。
当科では、京都府立医科大学附属病院形成外科と連携して再建のご要望にお応えしています。

再建する時期

一次再建:乳がんの手術と同時に再建を行います
二次再建:乳がんの手術後に期間をおいて再建術を行います

手術の回数

一期再建:皮膚を伸ばさず1回の手術で乳房のふくらみを作ります
二期再建:乳房のふくらみを作るには皮膚が足りず、数カ月かけて皮膚を伸ばした後にふくらみを作ります 

再建の方法

自家組織:お腹や背中の筋肉・皮膚を用いて再建を行います
人工物による再建:エキスパンダーという皮膚を伸ばすものを使用した後に人工乳房(インプラント)を入れる。乳がんの手術と同時にインプラントを入れることや自家組織とインプラントを併用することもあります

遺伝性乳がん卵巣がん(Hereditary Breast and Ovarian Cancer、以下HBOC

 遺伝性乳がんは、全乳がんの約10%を占めているといわれており、その約70%がBRCA1遺伝子もしくはBRCA2遺伝子の病的変異により発症するHBOCと呼ばれる遺伝性乳がんです。もちろんそのほかの遺伝子の異常で発症する乳がんもあります。
 HBOCにおける乳がんの特徴は若年・多発(同側、対側含む)、卵巣がんや膵臓がん、前立腺がんにも関与すると言われています。
2018年6月には、BRCA遺伝子変異のある進行・再発乳がんの治療薬(PARP阻害剤)の適応の有無の検索のためにBRCA遺伝子検査が保険適応となっています。
 さらに、2020年4月には乳がん発症者(卵巣癌発症者含む)でHBOCが疑われる方には、BRCA遺伝子検査が保険診療の対象となりました。これにより、BRCA遺伝子変異陽性者のリスク低減乳房切除術(再建を含む)やリスク低減卵管卵巣摘出術、MRI検査での検診が保険適応となりました。
 様々な治療方針を決定する際に、BRCA遺伝子検査を行います。
 治療方針を決定する際に、基準を満たす方にはBRCA遺伝子検査を提案してご希望があれば行います。

リンパ浮腫

術後や進行・再発乳がんには特に患側上肢リンパ浮腫を発症することがあります。リハビリテーション科と連携して加療にあたります。
また、リンパ管静脈吻合術といった手術の適応となることもありますので、形成外科と相談をさせていただきます。


乳がんは早期発見・再発予防のみならず、予防をも考える時代に入りました。また新しい治療薬の開発やそれに伴う臨床試験やガイドラインの改訂も行われており、適応があれば遺伝子検査を行い再発のリスクを予測した上で治療を決定する(OncotypeDX、CurebestTM 95GC Breastなど)ことも可能で、さらに個別化治療が進んでいます。
これからもしっかりと乳腺外科医として勉強に努め、患者さんやかかりつけ先生方・京都府立医科大学附属病院内分泌・乳腺外科や形成外科など、診療に関わる皆様のご協力とご理解をいただき、検診・診断・治療に取り組んでまいります。

患者さんへのお願い

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スタッフ紹介

部長安岡 利恵やすおか りえ

出身大学

徳島大学(1993年卒)

担当・専門分野

乳腺外科

資格・当院兼職

日本外科学会認定外科認定医

日本外科学会認定外科専門医

日本外科学会認定外科指導医

日本乳腺外科学会認定乳腺認定医

日本乳腺外科学会認定乳腺専門医

日本乳腺外科学会認定乳腺指導医

日本消化器外科学会認定消化器外科認定医

日本消化器外科学会認定消化器外科専門医

日本消化器外科学会認定消化器外科指導医

日本消化器病学会認定消化器病専門医

日本がん治療認定医機構認定がん治療認定医

日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会責任医師

京都府立医科大学 内分泌・乳腺外科学外講師

非常勤医師井口 英理佳いぐち えりか

出身大学

京都府立医科大学(2013年卒)

担当・専門分野

内分泌・乳腺外科

資格・当院兼職

日本乳癌学会認定乳腺専門医

日本外科学会認定外科専門医

日本がん治療認定医機構認定がん治療認定医

日本乳がん検診精度管理中央機構乳房超音波医師講習会A評価

日本乳がん検診精度管理中央機構マンモグラフィ読影試験A評価

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