「片頭痛」 安心して相談できる頭痛外来をめざして
2025年09月29日(月曜日)このたび、私は一般社団法人日本頭痛学会が認定する「頭痛専門医」試験に合格しました。これまで脳神経外科医として救急・手術・慢性期の診療に携わってきましたが、その経験を生かしつつ、「つらい頭痛を適切に見極め、生活の質(QOL)を取り戻す」ことを目標に、より専門性の高い頭痛診療に取り組みます。外来では問診・神経診察に加え、必要に応じて画像検査や生活・服薬の見直しを丁寧に行い、オーダーメイドの治療をご提案します。
脳神経外科 医長 吉浦 徹
片頭痛は「ズキズキ」「ドクドク」と表現される拍動性の痛みが特徴で、吐き気や光・音・においへの過敏、動くと悪化する、といった症状を伴うことがあります。前ぶれ(前兆)として視界がチカチカする「閃輝暗点(せんきあんてん)」などが出る方もいます。日本では成人の約6~9%が片頭痛を持つとされ、特に女性の30~40代に多い病気です。
珍しい病気ではありませんが、自己判断で市販薬を繰り返すうちに「薬の使い過ぎによる頭痛(MOH:Medication Overuse Headache)」、頭痛を抑える薬を頻繁に使い続けることで、かえって頭痛が起こりやすくなる/慢性化する状態に陥ることもあり、早めの専門診療が予防の近道です。[1]
片頭痛は命に関わらないことが多い一方で、「会社を休む(欠勤)」だけでなく、「出勤していても本来の力を発揮できない(プレゼンティーズム)」を通じて生産性の低下をもたらします。国内調査でも、片頭痛のある方はない方に比べ、労働生産性の損失が有意に大きいことが示されています。「我慢してやり過ごす」ことが、結果的にご本人にも社会にも大きな負担になりうる...
これが片頭痛のもう一つの側面です。[2]
従来はトリプタン製剤が急性期治療の中心でしたが、近年は選択肢が広がっています。
- ラスミジタン
脳血管を収縮させにくい5-HT1F作動薬(ジタン)で、心血管リスクがある方にも使いやすい急性期治療薬です。日本では2022年に承認され、国内試験でもアジア人における有効性と速効性が確認されています。[3] - CGRP関連抗体薬
片頭痛を起こすとされるCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)を標的とする月1回〜3ヶ月に1回の皮下注射による予防治療薬で、2021年に日本で承認されました。発作回数を減らし、QOLの改善が期待できるとされています。[4]
「片頭痛」と思っていても、なかにはくも膜下出血・脳出血・脳腫瘍・血管炎など、至急対応が必要な「二次性頭痛」が隠れていることがあります。突然・経験したことのない激しい頭痛、手足の麻痺・ろれつが回らない・意識障害などを伴うときは、ためらわず救急受診を勧めます。
外来では発症年齢・頻度・誘因・随伴症状・生活習慣・服薬状況を丁寧に確認し、必要に応じて画像や血液検査を行い、一次性頭痛(片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛など)と二次性頭痛をしっかり見分けます。
片頭痛は睡眠不足、空腹、脱水、光・音、天候、ストレス、カフェインなどで誘発されやすく、規則正しい睡眠、食事や運動が発作予防に役立ちます。薬は「急性期薬(痛いときに飲む)」と「予防薬(発作を減らす)」の組み合わせが基本です。
市販薬の連用は月10~15日以上でMOH(薬の使い過ぎによる頭痛)のリスクが高まるため、"使いどころ"と"やめどき"を一緒に設計しましょう。最新の国内外エビデンスを踏まえ、副作用や併用薬にも配慮した安全な頭痛診療をご提案します。[5]
「仕事や家事・育児、学業に支障が出ている」「市販薬が手放せない」「月に何度も寝込む」...そんなときこそ受診のタイミングです。
頭痛は"正しく診断して、正しく治療すれば良くなる"病気です。お一人おひとりの事情に寄り添い、"痛みの不安から解放される毎日"を一緒に目指します。どうぞお気軽にご相談ください。
- 担当: 脳神経外科 吉浦 徹
(日本頭痛学会認定頭痛専門医、日本脳神経外科学会認定脳神経外科専門医) - 診療日時: 火曜・金曜の午前(お薬手帳をご持参ください)
※紹介状をお持ちでない方は別途、初診にかかる費用(初診時選定療養費)がかかります。
- [1]: Matsumori, Yasuhiko et al. "Burden of Migraine in Japan: Results of the ObserVational Survey of the Epidemiology, tReatment, and Care Of MigrainE (OVERCOME [Japan]) Study." Neurology and therapy vol. 11,1 (2022): 205-222. doi:10.1007/s40120-021-00305-9
- [2]: Kikui, Shoji et al. "Burden of migraine among Japanese patients: a cross-sectional National Health and Wellness Survey." The journal of headache and pain vol. 21,1 110. 10 Sep. 2020, doi:10.1186/s10194-020-01180-9
- [3]: Takeshima, Takao et al. "Efficacy of Lasmiditan Across Patient and Migraine Characteristics in Japanese Patients with Migraine: A Secondary Analysis of the MONONOFU Trial." Advances in therapy vol. 39,11 (2022): 5274-5288. doi:10.1007/s12325-022-02304-0
- [4]: Takizawa, Tsubasa et al. "CGRP-monoclonal antibodies in Japan: insights from an online survey of physician members of the Japanese headache society." The journal of headache and pain vol. 25,1 39. 15 Mar. 2024, doi:10.1186/s10194-024-01737-y
- [5]: Takeshima, Takao et al. "Migraine Management in Japan: Current Approaches and Science Narrative Including an Evidence-based Review." Internal medicine (Tokyo, Japan), 10.2169/internalmedicine.4846-24. 19 Dec. 2024, doi:10.2169/internalmedicine.4846-24
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