鼻はつまっていませんか?
2025年09月25日(木曜日)鼻づまりの原因は、鼻水だけじゃない?
知られざる鼻の仕組みを解説。鼻づまりの病気とその治療も紹介します!
耳鼻咽喉科部長 齋藤 敦志
風邪をひいたとき、鼻がつまって鼻呼吸がしにくくなる経験をしたことがある方は多いと思います。
「鼻水がたまっているのかな?」と思って鼻をかんでも、ほとんど鼻水が出ず、鼻づまりが改善しないこともありますよね。
自分で鼻をかめない小さなお子さんの場合、鼻水がたまって鼻づまりになることもありますが、実際には鼻水が鼻づまりの原因ではないことが多いのです。
風邪では、ウイルスなどにより鼻の粘膜が炎症を起こし、腫れることで鼻の通りが悪くなります。
鼻がつまると、口呼吸になり、口やのどが乾燥します。また、いびきをかきやすくなり、睡眠の質が低下して、日中に眠気を感じることもあります。
このように、鼻づまりが日常生活のパフォーマンスを低下させてしまいます。
鼻づまりが風邪によるものであれば、通常は1~2週間で炎症が治まり、鼻づまりも改善します。ただし、それ以上続く場合には、何らかの疾患が原因となっている可能性があります。
鼻の病気を紹介する前に、まず鼻の構造について見ていきましょう。
鼻の中は「鼻腔」と「副鼻腔」で構成されています(図1)。
鼻腔が狭くなると鼻がつまりますが、副鼻腔はほほのあたり、目と目の間、おでこのあたりにあり、鼻づまりには直接関係しません。
鼻腔と副鼻腔は狭い通路でつながっています。左右の鼻腔の間には、鼻中隔(びちゅうかく)という板状の仕切りがあります。

ダニやハウスダストによる通年性アレルギー性鼻炎、スギやヒノキなどの花粉による季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)があります。
これらのアレルゲンが鼻に入ると、鼻腔の粘膜が腫れて鼻づまりが起こります。鼻づまりのほか、くしゃみ・鼻水・目のかゆみを伴うことも多いです。アレルギー性鼻炎の有病率は49.2%で、2人に1人はアレルギー性鼻炎ということになり、近年も増加傾向にあります。
副鼻腔に炎症が起きて副鼻腔炎になると、副鼻腔にねばっこい液体がたまり、それがのどに流れてきたり、鼻をかむと黄色っぽい鼻水が出たりします。急性の場合には痛みを伴うこともあります。
また、副鼻腔や鼻腔の粘膜が炎症を起こし、ポリープ状に腫れて鼻の通り道に出てくると鼻づまりの原因になります(図2)。
これを鼻茸(はなたけ)と呼びます。アレルギー性鼻炎の多くは鼻がつまるのに対し、軽症の副鼻腔炎では鼻茸が小さく、鼻づまりの症状はほとんどありません。
最近では、有名YouTuberが手術を受けたことで知られる好酸球性副鼻腔炎という疾患があります。これは指定難病で、嗅覚障害を伴うことが多いのが特徴です。

左右の鼻腔の間に鼻中隔という板状の仕切りがあります。多少は曲がっていることが多いですが、鼻中隔が大きく曲がっていると、鼻腔が狭くなり鼻づまりの原因となります。
たとえば、右に曲がっていると狭くなっている右の鼻がつまります。鼻中隔の弯曲が強い場合、アレルギー性鼻炎の症状が強くなったり、副鼻腔炎が治りにくくなったりします。
お子さんでは、鼻そのものに異常がなくても鼻づまりが起こることがあります。たとえば、鼻の奥にあるアデノイド(扁桃組織)は、5~6歳頃に最も大きくなり、その後、成長とともに小さくなります。このアデノイドが大きいと、鼻づまりやいびきの原因になります。
また、鼻づまりが続くからといって市販の点鼻薬を使い続けると、かえって鼻粘膜が腫れ、鼻づまりが悪化することがあるため、注意が必要です。
耳鼻咽喉科では、細いファイバー(内視鏡)を鼻から挿入し、鼻の中を観察します。胃カメラよりかなり細く、事前に鼻に痛み止めスプレーを使用するため、多少違和感はありますがほとんど痛みはありません。副鼻腔炎や鼻中隔弯曲の程度を調べるために、CT検査を行うこともあります。
診断がついたら、まずは薬物療法を行います。内服薬や点鼻薬のほか、鼻から薬を吸入するネブライザーなどの治療をします。それでも症状が改善しない場合は手術を検討します。
手術は内視鏡を用いて鼻の中から行うため、かつてのように口の中を切開することはありません。鼻中隔が強く弯曲していれば、曲がっている鼻中隔の軟骨や骨の一部を取り除いて形を整えます。
アレルギー性鼻炎では、粘膜の腫れが強ければ鼻腔粘膜の中の骨を取り除いて腫れを少なくし、アレルギー性鼻炎を引き起こす神経を切断します。
副鼻腔炎では、副鼻腔と鼻腔が広くつながるようにして、鼻茸を切除し、副鼻腔の鼻水を吸いとり、副鼻腔をきれいにします。
副鼻腔の手術は、目や頭の近くを手術するため、怖い印象を持たれる方もいると思います。以前は、局所麻酔で鼻の手術を行うことが多かったのですが、最近はほとんど全身麻酔で行っているため、手術中の痛みはなく、体への負担も軽減されています。
また、近年はナビゲーションシステムの導入により、どの部分の処置を行っているのかリアルタイムに確認ができ、以前より安全な手術が可能になっています。
ここまで、鼻づまりの原因となる主な疾患や治療法についてご紹介してきました。鼻づまりは、しっかり治療をすれば、改善することが多い症状です。
鼻づまりが改善しないときは、市販の点鼻薬をなんとなく使い続けるのではなく、まずお近くの耳鼻咽喉科クリニックを受診することをおすすめします。
耳鼻咽喉科部長
2000年京都府立医科大学卒業。
京都第一赤十字病院、社会保険京都病院(現京都鞍馬口医療センター)、近江八幡市民病院(現 近江八幡市立総合医療センター)、京都府立医科大学大学院、京都府立医科大学附属北部医療センター、京都第二赤十字病院を経て現職。
日本耳鼻咽喉科学会認定耳鼻咽喉科専門研修専門医・指導医、日本気管食道科学会認定耳鼻咽喉科専門医(咽喉系)、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定補聴器相談医、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定騒音性難聴担当医
