健康寿命をのばそう ロコモティブシンドロームって何?

2026年09月07日(月曜日)

いつまでも元気に歩き続けるために。要介護・要支援の大きな原因である
「ロコモティブシンドローム」を知って、予防と治療について考えましょう。

院長補佐・整形外科部長・リハビリテーション科部長 劉 和輝

春には長岡天満宮のキリシマツツジを楽しみ、秋には光明寺の紅葉を眺める。桂川沿いを散歩したり、西山の自然を感じながら歩いたりする。私たちが暮らす乙訓地域には、四季を感じながら楽しめる場所が数多くあります。こうした地域の魅力を楽しむために欠かせないのが、自分の足で元気に歩き続けることです。
日本は長寿国ですが、「健康寿命」をいかに延ばすかが重要な課題となっています。健康寿命とは、介護を必要とせず、自立した生活を送ることができる期間のことです。関節疾患や骨折・転倒など運動器の障害は、要介護・要支援の主要な原因となっています。

そこで注目されているのが「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」です。

劉医師の写真

ロコモティブシンドロームってなに?

ロコモティブシンドローム、略して「ロコモ」とは、骨・関節・筋肉などの運動器の障害によって移動能力が低下した状態を指します。進行すると外出や運動の機会が減り、最終的には要介護につながることがあります。

  • 片脚立ちで靴下がはけない
  • 家の中でつまずく
  • 階段の上り下りがつらい
  • 横断歩道を青信号のうちに渡れない

といった症状は、ロコモのサインかもしれません。

ロコモは加齢とともに誰にでも起こりうる身近な問題です。しかし、早期に発見し適切な予防や治療を行うことで、健康寿命を延ばし、元気に歩き続けることができます。

ロコモティブシンドロームの原因になる病気と治療

ロコモの原因となる病気には、骨粗鬆症、変形性膝関節症、変形性股関節症、腰部脊柱管狭窄症などがあります。

骨粗鬆症

骨粗鬆症は骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気ですが、初期にはほとんど症状がありません。しかし、背骨の圧迫骨折や太ももの付け根の骨折(大腿骨近位部骨折)を起こすと、歩行能力が大きく低下し、要介護状態につながることがあります。

そのため骨折してから治療するのではなく、骨折を予防することが重要です。当院では骨粗鬆症リエゾンサービス(OLS)を推進し、医師だけでなく看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士など多職種が連携して骨折予防に取り組んでいます。また地域の医療機関や行政とも協力しながら、継続的な骨粗鬆症治療を支援しています。

多職種連携会議の様子
多職種連携会議
変形性膝関節症

変形性膝関節症は、加齢や筋力低下などにより膝の軟骨がすり減ることで、痛みや変形が生じます。
「立ち上がる時に膝が痛い」「階段の上り下りがつらい」「長い距離を歩けない」といった症状がみられるようになると、外出や運動の機会が減り、ロコモの進行につながります。
当院ではまず運動療法や体重管理、消炎鎮痛薬、ヒアルロン酸関節内注射などの保存療法を行います。また足底板を用いて膝への負担を軽減し、歩行機能の維持や改善を目指します。
それでも症状が改善しない場合には手術療法を検討します。

人工関節の手術の様子
人工関節の手術
人工膝関節置換術とは

人工膝関節置換術は、変形した骨やすり減った軟骨を、金属とポリエチレンでできた人工関節に置き換える手術です。手術によって膝の痛みやO脚変形が改善し、多くの患者さんが再び快適に歩けるようになります。

当院では、筋肉をできるだけ温存する手術方法を採用し、術後の早期回復に努めています。また、条件を満たす患者さんには、傷が小さく身体への負担が少ない人工膝関節部分置換術も行っています。さらに人工膝関節全置換術では、コンピューター支援技術を活用し、より正確な人工関節設置を行っています。

人工膝関節置換術の前後の写真
左:人工膝関節置換術前、右:人工膝関節置換術後
「動ける幸せ」のために

実際に、「また旅行に行けるようになった」「孫と出かけられるようになった」「長岡天満宮や光明寺へ散策に行けるようになった」と喜ばれる患者さんも少なくありません。

整形外科治療の目的は単に痛みを取ることではありません。動く喜び、動ける幸せを支え、健康寿命を延ばすことにあります。
京都済生会病院の整形外科では、乙訓地域のみなさんの「動ける幸せ」を支えるため、骨粗鬆症対策から人工関節治療まで幅広い診療を行い、健康寿命の延伸に取り組んでいます。
長岡天満宮や光明寺の散策など、地域の魅力をいつまでも楽しんでいただけるよう、膝や腰の痛み、歩きにくさを感じたらお気軽にご相談ください。

筆者プロフィール
劉 和輝(りゅう かずてる)

院長補佐・整形外科部長・リハビリテーション科部長

京都府立医科大学臨床教授・客員講師、日本抗加齢医学会評議員、京都府医師会健康スポーツ医学委員会副委員長、京都府スポーツ協会スポーツ科学委員、京都陸上競技協会医事委員。
専門はスポーツ整形外科、膝関節外科、外傷学、骨軟部腫瘍、ロコモティブシンドローム。地域における健康寿命の延伸や運動器障害の予防・治療に取り組んでいる。
2019年度「運動器の健康・日本賞」奨励賞、2022年度日本抗加齢医学会ダイバーシティ貢献賞、2024年度京都府立医科大学関連病院等協議会「地域医療貢献賞」、2026年度京都府スポーツ協会「功労賞」受賞。

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