心房細動という不整脈

2021年02月01日(月曜日)

高齢化に伴い増加している不整脈のひとつ「心房細動」は、心房内の電気信号が乱れ、心房がけいれんしたように細かく震える心臓の病気です。
この病気を根治するアブレーション治療とは?

後列右から3 番目:横江 洋之/前列右から2 番目:石橋 一哉

心房細動という不整脈と治療

副院長・循環器内科部長  石橋 一哉

 心房細動は、日本で約100万人が経験するといわれる不整脈で、決して珍しい病気ではありません。心房が細(こま)かく動くので心房細動という名前がついていますが、実際は心房がほぼ動いていない状態です。心臓が停止しているわけではなく、大事な心室はちゃんと動いていますので、すぐに命が脅かされることはありません。ただやっかいのことに、10年から20年の年月を経て、じわじわとボディーブローのようにきいてくる心臓の病気です。
以前は良性の不整脈とされていましたが、決してそうではないことが近年わかってきました。長い経過を経て弁膜症を発症し、心臓の機能が徐々に低下し、高齢者ではしばしば心不全の原因となります。また、経過中、左心房内(左心耳)に血栓ができて、血栓が頭の血管に移動して血管が閉塞し、脳梗塞を発症します。脳梗塞になると緊急で処置が必要で、放置すると大きな後遺症が残り、ねたきりの状態になる可能性が高いです。
 でも、安心してください。心房細動は医療の著しい進歩により根治できる不整脈になってきています。その治療法が、カテーテル・アブレーションという方法です。数日間の入院で根治させることができ、すぐに社会復帰できます。アブレーションとは、心房細動の原因である肺静脈起源の不整脈を封じ込める治療法で、4本ある肺静脈を電気的に隔離する(血管から心臓の中に異常な電気信号が流れ込まないようにする)方法です。
 アブレーションは特に、心房細動による自覚症状(動悸、胸の違和感、ふらつき、息切れなど)が強い方、心臓の機能がやや低下している方にお勧めします。また、心房細動を発症してから早い段階での治療が特に有効です。経過が長い方は有効率が低くなります。この治療はカテーテル治療であり安全性は極めて高いですが、心臓の手術ですので危険はゼロではありません。そのため、成功率、安全性、危険性について担当医と十分に話し合った上で、治療を受けてください。当院では、不整脈の専門医2名(石橋、横江)が診療にあたっています。

石橋 一哉 (いしばし かずや)

副院長、循環器内科部長。日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会認定循環器専門医、日本不整脈心電学会認定不整脈専門医。1988年京都府立医科大学卒業。大学院修了後、京都府立与謝の海病院、亀岡市立病院を経て2006年に現病院に赴任。2018年5月より現職。京都府立医科大学臨床教授、乙訓医師会理事などを兼務。

心房細動に対するアブレーション治療

循環器内科 副部長  横江 洋之

 近年は心房細動に対するカテーテルアブレーション(心筋焼灼術)の成績が向上し、心房細動が時々起こる発作性の心房細動や常に心房細動が続くようになった場合でも持続期間の短い(1年未満)心房細動においては、アブレーション治療を投薬治療と並ぶ治療の第一選択と考えています。早期に治療できたケースでは80%以上の方が1回のアブレーション治療で心房細動の不快な症状から解放されます。
 実際のアブレーション治療は、心房細動の引き金(トリガー)となる電気興奮を取り除き、正常な電気興奮により心臓が再び正常にリズムよく収縮できるようにします。健常な心筋はできるだけ残し、悪さをする興奮は焼灼、または健常部位から電気的に隔離するようにします。実際の治療は平均2~3時間で、安全性も高い鎮静薬と鎮痛薬を上手に使用し、眠っている間に安定した呼吸管理下に行います。治療による痛みや不快感がなく、治療の確実性・安全性が向上したため、高齢の方でも安全に治療を受けていただけるようになりました。アブレーション治療は、最新の高密度マッピングカテーテルを使用し患者さん毎に心臓を3次元で立体・可視化しオーダーメイドで行います。安全で確実な通電効果が得られる治療用焼灼カテーテルも導入し、不整脈デバイステクノロジーの進歩を駆使して複雑な不整脈の回路を同定し、治療を行なっています。
 当院のアブレーション治療はより低侵襲に、合併症が少なく、確実な治療を行うことをめざしています。不幸にも再発した場合でも、循環器内科スタッフと不整脈担当臨床工学技士の心臓不整脈電気生理治療チームで何故再発したかを検討し、再アブレーションで根治できるように努めています。

横江 洋之 (よこえ ひろし)

循環器内科副部長。専門分野は不整脈カテーテルアブレーション・ デバイス治療、循環器内科全般。
2002年関西医科大学卒業。市立岸和田市民病院、関西医科大学枚方病院、河内総合病院の勤務を経て、2020年に済生会京都府病院に赴任。2020年10月より現職。 掲載の「京なでしこ」を見る

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