賢い健診のかかりかた

2024年04月03日(水曜日)

健康診断の結果をみていますか?
「要精密検査」を放置していませんか?
これからの健康な毎日のために健診結果を確認しましょう。

健診センター副センター長 小林 恭子


「法定健診」と「任意健診」

私たちは健康診断、いわゆる「健診」を生涯にわたり受けています。妊婦健診から始まり、乳幼児健診、小学校入学時の就学時健診から大学を卒業するまで、そして社会人になっても医療保険各法や労働安全衛生法により健診は確保されています。これら健診は、法律によって実施が義務付けられた「法定健診」と個人が任意判断で受ける「任意健診」に分けられます。

「法定健診」は、妊婦、乳幼児、労働者(従業員)と扶養者(市民)など対象によって内容が定められています。労働者に対する雇い入れ健診・定期健診は、法律で事業者に義務付けられ、労働者も受けなければなりません。特定健診は「メタボ健診」とも呼ばれ、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病に特化し(がん検診項目は含まず)、40〜74歳の医療保険加入者とその扶養者が受けることができます。
75歳以上の方は、介護予備軍の方を早期発見し、予防につなげることを目的とした後期高齢者医療健診(フレイル健診)を受けることができます。

「任意健診」には、人間ドックなどがあり、法定健診や特定健診よりも検査項目が多く、生活習慣病だけでなく厚生労働省が勧めるがん検診も含んでいます。外来診療や健診で経過観察している項目も多くあり、年1回の経過観察に非常に有用です。

日本人の高齢化に伴い、男女ともに平均寿命と健康寿命※1の差が10年ほどあるといわれています。なんとかこの差を縮めるためには、働く世代からの健康管理の積み重ねが大切です。そのためにも、健診をしっかりと活用してほしいのですが、健診結果がお手元に届いたらどうしていますか? 健診結果を確認していますか?

次は、健診結果が届いたら確認してほしい3つのポイントを説明します。

※1 健康寿命:健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間

健診結果を確認していますか?

健診医からのメッセージ

健診結果がお手元に届いたら、「総合所見」と「各検査項目の判定」を確認してください。
「総合所見」は健診医からのメッセージです。ここには、各項目についての指示が記載されています。例えば「○○検査に異常がみられますので、3か月後にかかりつけ医や内科で再検査を受けてください」、「△△検査で異常がみられますので、精密検査を受けてください」などです。まず、どの検査項目にメッセージが記載されているのか、早めの受診が必要か否かを確認してください。

健診の判定(5つの評価A・B・C・D・E)

健診結果には必ず判定がついています。判定の意味は次の通りです。

  • A:異常なし
  • B:軽度異常
    少し異常がみられますが日常生活には差し支えありません。但し、自覚症状があれば受診してください。
  • C:要再検査・生活改善・経過観察
    3か月後、6か月後に再検査を受けてください。食生活や運動習慣などの生活習慣を改善しましょう。また、年1回の健康診断で経過を確認してください。
  • D:要精密検査・要治療
    直ちに精密検査、もしくは治療をしてください。
  • E:治療中
    すでに通院している、治療を受けている場合は、主治医の指示に従って治療を継続してください。

これらのすべての判定に意味があるということを知っておいてください。

※但し、健診機関によっては判定表記が異なる場合があります。

「再検査」と「精密検査」の違い

では、「再検査」と「精密検査」の違いを知っていますか? 健診医からのメッセージを確認しても具体的にどうすればよいかわからない方も多いのではないでしょうか。

「再検査」は3か月後、もしくは6か月後にかかりつけ医などで同じ項目の検査を受け、経過観察でよいのか、それともより詳しい検査が必要になるのか、医師から説明を受けてください、という意味です。

「精密検査」は直ちに、もしくは1か月以内にさらに詳細な検査を設備が整った病院で受けて診断をつけてください、という意味です。例えば、腹部超音波検査や胸部レントゲン検査などで異常が見つかった場合、他の画像検査(例えば腹部CTや胸部CT、MRI 検査など)などでより確実な診断をつけて、悪性の疾患かどうか、今すぐ治療が必要かどうかの判断をします。

以上の3つのポイントで一番大切なのは「健診結果でC判定、D判定の項目は放置せず、医療機関を受診する」ということです。

受けっぱなし健診で終わってはいけない!

実は、健診は「受けた後」が一番大切です。健診は、今の自分の健康状態を確認するだけでなく、自分の生活習慣を見直す絶好のチャンスです。健診結果をそのまま放置せずに「生活習慣を改善する」「再検査や精密検査を受ける」など、自分の健康な将来を決めるのは、健診後の行動です。自分のため、大切な家族のため、これからの健康な日々のために、受けっぱなし健診で終わってはいけません。

D判定の要精密検査と記載されていたり、気になることや心配なことがあったりする場合は、健診結果を持ってかかりつけ医に相談してください。要精密検査判定をそのまま放置されていると、早期発見のはずが手遅れになってしまう危険性もあります。まずはかかりつけ医を持つこと、そのうえで結果を持参して相談されるようお勧めしています。

かかりつけ医がいない場合は、健康診断を受けた施設で相談してください。

小林 恭子 (こばやし きょうこ)

健診部部長・健診センター副センター長
1987年近畿大学医学部卒業。京都大学附属病院内科、国立京都病院(現京都医療センター)にて研修。神戸市立中央病院(現神戸市立医療センター中央市民病院)内科フェロー。京都大学附属病院第一内科入局 消化器内科医員。武田病院健診センター勤務を経て、京都済生会病院健診センターに勤務。日本人間ドック学会認定人間ドック健診専門医、日本医師会認定産業医。

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