京都乙訓でロボット支援手術を―導入プロジェクト始動
2024年05月31日(金曜日)地域のみなさまや多くの関係者の支えにより、京都済生会病院は2022年6月に新病院をスタートすることができました。
次の当院のステップとして、高度医療を含め、乙訓地域で医療を適切に完結させられるように、2025年春の手術支援ロボット(ロボット支援手術) の導入に向けたプロジェクトが始動しました。おそらく手術支援ロボットの導入は京都乙訓地域で第1号となる予定です。今回の京なでしこでは、想定される素朴な疑問にお答えしながら、多くのみなさまにロボット手術を知ってもらおうと思います!
副院長・外科部長 藤 信明
おことわり
掲載している写真は、当院とは別の済生会病院に導入されている手術支援ロボットです。当院への導入は2025 年の春を予定しています。なお、掲載写真と同じ手術支援ロボットが導入されるとは限りません。あらかじめご了承ください。ロボット支援手術って何ですか?(ロボット支援手術とは)
ロボット支援手術とは、ロボットが人に代わって手術をするのではなく、ロボットが医師の手術をサポートするものです。医師がロボットを活用して、より精度の高い手術を可能にしたのがロボット支援手術です。現在のところ、体に負担の少ない手術では、腹腔鏡手術や胸腔鏡手術が中心ですが、ロボット支援手術はそれらの進化形ともいえますし、また似て非なるものともいえます。他施設では、ペイシェントカート(患者さん側)とサージカルコンソール(術者側)を遠隔に配置した遠隔手術も実証実験の段階に入りました。
サージカルコンソールで執刀する医師(写真提供:済生会加須病院)
どうしてロボット支援手術が良いのですか?(ロボット支援手術のメリット)
これまでは開腹手術と比べて腹腔鏡手術の利点が強調されてきました。たとえば、
- 傷が小さく術後の痛みが小さい
- そもそもが「低侵襲手術」なので体への負担が少ない
- 3D(3次元)カメラや拡大して見ることができる(拡大視)効果を利用してより安全で精緻な手術が可能である
などです。
では、腹腔鏡手術に比べてロボット支援手術はどうなのでしょうか。腹腔鏡や胸腔鏡手術の進化形とお伝えしたとおり、
- 人の関節可動域の制限や鉗子の動作制限が少ない
- 術者の手の動きは、実際より小さな動作に変換され、手ブレが取り除かれる
- 術者は椅子に座ったまま手術ができる
などがあります。特に1.と2.は、より安全で精緻な手術を行ううえで、非常に重要です。さらに3Dモニターや拡大視効果も一層向上しています。
ロボット支援手術で困ることはないのですか?(ロボット支援手術のデメリット)
ロボット支援手術による合併症の頻度やリスクが最も気になるところですね。開腹手術・腹腔鏡手術と比べて同じか、いくぶんかは低く抑えられるといった報告が多いようです。
病院としての一番のハードルが、導入コストと維持コストが高額であることで、これはかなり悩ましい課題ではあります。患者さん側からすると、手術内容によっては診療報酬点数が高く設定されている場合がありますので、医療費や自己負担額が多少高くなる可能性があります。入院・手術に関わる自己負担額は年齢・収入、各種健康保険、高額療養費制度などによって異なりますので、ロボット支援手術導入後にお問い合わせください。
いつから始まるのですか?(開始時期)
当院のロボット支援手術の開始目標を、2025年4月に定めて導入準備を進めています。ロボット支援手術は相当の手術技術を要しますので、ロボット支援手術を行える医師の養成や人材確保に取り組みます。
どんな疾患にロボット支援手術が可能なのですか?(適応術式)
保険適応しているロボット支援手術は、診療報酬点数表で定められています。泌尿器科領域での前立腺がん、腎がんなどの手術や消化器外科領域では胃がん、結腸がん、直腸がんなどの手術をはじめ、肺がん、子宮がんなどの手術でロボット手術が可能です。ただし、患者さんがロボット支援手術を希望しても、それぞれの疾患の病期(ステージ) やリスクによって、ロボット支援手術が行えるかどうかが決まります。各診療科において担当医にお尋ねいただければお答えできるように今後準備をしてまいります。
誰でもロボット手術を受けられますか?(手術適応など)
ロボット支援手術を受けるのに年齢制限はありません。高齢の方でも、一般的に開腹手術、腹腔鏡手術に耐えられる状態であればロボット支援手術は可能です。ただし、病状や既往歴などにより、ロボット支援手術を適応できない場合もあります。担当医師が患者さんに説明を行い、十分に話し合ってから、術式を決めます。
さいごに
ロボット支援手術は、京都府乙訓地域では今回が初めての導入になる予定ですが、京都市内ではここ数年で多くの病院で導入しています。乙訓圏外の地域でロボット支援手術をすでに受けられた方もいらっしゃるでしょう。住み慣れた地域で医療を完結できることは、地域のみなさまの率直な願いでもあり、我々医療者にとっても大きな使命だと考えています。今後もより安心・安全で、かつ高度急性期医療にも適切にお応えできるように努めます。当院でのロボット支援手術導入につきまして、みなさまのご支援とご協力を賜りますようよろしくお願いします。
藤 信明 (ふじ のぶあき)
副院長、外科部長
1990年 京都府立医科大学卒業。公立南丹病院(現京都中部総合医療センター)、京都府立与謝の海病院(現京都府立医科大学附属北部医療センター)、京都第二赤十字病院を経て、現職。
日本外科学会認定外科専門医・指導医、日本消化器外科学会認定消化器外科専門医・指導医、日本肝胆膵外科学会認定高度技能指導医・評議員、日本消化器病学会認定消化器病専門医・指導医、日本大腸肛門病学会認定大腸肛門病専門医・指導医、日本臨床外科学会評議員。