わたしが "頻尿" になっても...
2024年09月27日(金曜日)済生会フェア2024 の泌尿器科 稲葉医師による人気講座「わたしが" 頻尿" になっても...」が京なでしこに登場!
どこかで聞いたような、口ずさみたくなる記事タイトルにのせて、気になる"頻尿" について紹介します!
泌尿器科 部長 稲葉 光彦
最近そういえば、
「尿が近いなぁ」
「尿の回数が多いなぁ」
と気になった方はいらっしゃるでしょうか?
そのようなみなさんに少しでも役に立てばありがたいです。しばらくお付き合いください。
さて、前述のように、「尿が近いなぁ」「尿の回数が多いなぁ」と気になったらどうしますか?
しばらく考えてみて、多くの方は次の4パターンに当てはまるのではないでしょうか。
- 今度、かかりつけ医で相談しよう
- 泌尿器科へ行ってみよう
- ちょっと調べてみよう(近所の"物知り"に聞いたり、インターネット検索したりなど)
- たいしたことないのでほうっておこう
今回は、あなたが泌尿器科を受診された時に、どのように診察が進められていくか紹介します。
なお、前立腺は男性だけにある排尿に関して非常に重要な臓器ですが、今回は膀胱を中心に説明します。
まず、言葉の定義として、日本泌尿器科学会のホームページから抜粋すると、「尿が近い、尿の回数が多い」という症状を"頻尿"といいます。一般的には、朝起きてから就寝までの排尿回数が8回以上の場合を頻尿といいます。しかし、1日の排尿回数は人によってさまざまなので、一概に1日に何回以上の排尿回数であれば異常ともいえず、8回以下の排尿回数でも自分自身で排尿回数が多いと感じる場合には頻尿といえます。
膀胱には、腎臓でつくられた尿を「ためる」「止める」「出す」という働きがあります。これらのうち「ためる働き」と「出す働き」の具合が悪くなると頻尿になる可能性が考えられます。
もし頻尿症状があり、泌尿器科を受診された場合、まず次の3つから膀胱のどの働きに問題があるのかを確認していきます。
- 問診
- 尿検査
- 超音波検査
問診では、
- 排尿の間隔(何時間毎か)
- 1回の排尿量(多いか・少ないか)
- 頻尿になる時間帯(午前・午後・1日中・睡眠中など)
- その他の排尿症状の有無(排尿困難・残尿感・排尿時痛など)
- 既往症の有無(糖尿病・脳神経疾患・直腸がん・子宮がんなどの手術歴)
- 既往症での内服薬など
を確認します。中には1日の排尿時間と1回の排尿量を記録してもらい、診療の参考にすることもあります。
尿検査では、尿中の白血球、赤血球、尿たんぱくや尿糖から病気がないか確認します。
- 白血球:感染症
- 赤血球:結石や腫瘍の疑い
- 尿たんぱくや尿糖:腎炎や糖尿病の疑い
3つ目の超音波検査は非常に重要な検査です。超音波検査により排尿後に膀胱に尿が残っていないかを確認したり(残尿の有無)、結石や腫瘍のような膀胱疾患の有無、あと男性の場合は前立腺肥大症などの前立腺疾患の有無を確認したりします。
診察の結果、次のどの病態で頻尿症状をきたしているのかを判断します。
- 1日の尿量に問題がなく、膀胱容量が小さいため、残尿が少なくても、頻尿となる方
- 1日の尿量に問題がなく、膀胱容量が正常でも、残尿が多く、頻尿となる方
- 1日の尿量が多いため、膀胱容量が正常で、残尿が少なくても、頻尿となる方
- 上記以外の病態が原因と考えられる方
治療に関しては、前述のそれぞれの病態に応じて考えます。
- の場合、膀胱を広げる作用のある薬剤を試してみます。この系統の薬剤は何種類もあり、いろいろと試すことができます。
- の 場合、1.の薬剤は残尿が増え、排尿ができなくなる可能性もあるため処方できませんので、まずは残尿量を減少させる薬剤を試します。
- の場合、膀胱機能は問題がないため、可能であれば飲水制限などの生活指導を中心に行います。1日の尿量が問題ない量にまで減少できれば、頻尿症状も改善することが期待できます。
- の場合、それぞれの原因に対する治療が中心で、補助的に上記1・2・3の治療をします。病態によって症状改善の困難になる可能性があります。
以上、頻尿症状があり泌尿器科を受診されたら、どのように診療が進められるか簡単ではありますがご紹介しました。実際には誌面で紹介しきれないような詳細な部分にも原因があったり、複数の原因が重なりあったりする可能性はありますが、それぞれの患者さんの頻尿症状をきたす病態にそった治療を考え、症状改善を目指していきます。
最後になりましたが、もし頻尿になっても「何とかなる」かもしれません。
頻尿以外の排尿症状でもかまいません。何か排尿状態について気になったり、心配な点があったりするようでしたら、一度お近くの泌尿器科への受診を考えてみられてはいかがでしょうか。
稲葉 光彦 (いなば みつひこ)
泌尿器科 部長
1996 年 滋賀医科大学卒業。京都第一赤十字病院、大阪府済生会吹田病院、松下記念病院等を経て、2017 年4 月より現職。
日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医・指導医、日本透析医学会認定透析専門医。