歴史好き内科医の歴史噺(3)

2020年08月01日(土曜日)

 ここは天上の病魔大王の館。病魔大王は息子の病魔童子と酒を酌み交わしています。「昨日は、光秀が謀反を起こしたようですが、父上はまた何か細工をされたのですか?」と息子に聞かれると「あれはわしが細工する前に、病魔にむしばまれておった。レビー小体型認知症じゃよ。優秀な大名だったがのう」と病魔大王は答えました。
 55 歳になった明智光秀は、本能寺の変の数年前から毎晩、巨大な信長に監視される悪夢に見舞われていました。昼間には幻覚までみてしまい、さらには信長を怒らせて領地は召し上げられ、秀吉の指揮下で中国攻めを指示される始末。精神状態は極限にきてしまい、中国攻めに出発せずに信長がわずかな手勢とともに宿泊していた本能寺に向かったのです。
 明智光秀がレビー小体型認知症だったのではというのは最近の説ですが、本当のところはわかっていません。レビー小体型認知症では記憶をつかさどる海馬という脳の領域は初期には保たれ、かわりに幻視、レム睡眠障害、嗅覚障害、実行機能障害、視空間認知障害などの特徴的な症状が現れます。本人は気づきにくいため、周囲にこのような症状を訴えている方がいらっしゃれば、神経内科、総合診療内科などの受診をお勧めします。

診療部長・消化器内科 中島智樹
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