乳がん検診を日常に~ブレスト・アウェアネス~

2021年11月01日(月曜日)

乳がんは、女性が最も多く罹患するがんです。
近年の罹患数は約90,000人。今や女性の9人に1人が乳がんに罹患するとされ、増加の一途をたどっています(グラフ1)。2019 年の乳がん検診受診率は50% 未満で、また、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、2020 年の乳がんを含むがん検診の受診率は約30%減少しているのではないかともいわれています。そこで心配されるのは、自覚症状のない早期がんの発見が遅れることです。乳がんの病期別10 年生存率はStageⅠで95% 以上、StageⅡで86%以上と、早期発見で治療をすれば非常にコントロールのよいがんの一つなので、感染対策にも留意しながら、ぜひ乳がん検診を受けてください。
今回は、皆さんからよく質問される内容について、いくつかお答えします。

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Q1: ブレスト・アウェアネス(=乳房を意識する生活習慣)とは?
女性自身が乳房の状態に日頃から関心をもち、乳房を意識して生活することを「ブレスト・アウェアネス」といい、乳がんの早期発見・診断・治療につながる、女性にとって非常に重要な生活習慣を意味しています。
・乳房の状態を知ること
・乳房の変化に気づくこと
・ 乳房の変化に気づいたら、医療機関を受診すること
・定期的に乳がん検診を受けること


Q2:乳がんの自覚症状は?
・しこり
・皮膚の異常(発赤、びらん、ひきつれなど)
・乳頭陥没などの乳頭乳輪の変化
・乳頭からの異常分泌物(特に血性)
・腋窩のしこり(リンパ節腫大や副乳)
・上肢の浮腫
・痛み       など
必ずしも「しこり」だけが乳がんの症状ではありませんし、男性でも乳がんの可能性があります。
自覚症状があれば、検診ではなく乳腺外科を受診してください。

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Q3:乳がんの自己触診の方法が知りたい!
毎月1回はセルフチェックを行いましょう。
閉経後の方は毎月日にちを決めて、閉経前の方は生理開始後7~10日くらいの時期で、あなたの乳房の張りが一番少ないと感じる日がよいです。

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Q4: マンモグラフィ検査と超音波検査、どちらを受けたらいいですか?
検査機器は進化していますが、それぞれの検査に利点・欠点があり、どちらかだけで良いとはいえません。
マンモグラフィ検査は、40 歳以上での死亡率減少効果のデータはありますが、若い方や高濃度乳房の方はマンモグラフィ検査で乳腺全体が白く写るので、病変が見つけにくい傾向にあります。一般的に高濃度乳房は閉経状態や授乳などと関係するために若い方に多いのですが、日本人では40歳以上の40%が高濃度乳房といわれています。一概に年齢だけで判断できませんので、特に40 歳以上の方はマンモグラフィ検査でご自身の乳腺の状態を知り、有効な検査方法を判断することが必要です。

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Q5: 検診で「精密検査必要」の結果でした。
やっぱり乳がんですよね?
必ずしも乳がんが確定している訳ではありません。
検診のデメリットとしては、①必ずしも検診でがんが発見できるわけではないこと、②がんがないにも関わらず、「要精査」と判定され、必要のない検査を受けることになる可能性、③「要精査」と判断されたことによる心理的影響などがあげられます。  
日本対がん協会によると、2018 年度検診における乳がん発見率(=がん発見数÷受診者数)は0.26%と解析されています。しかし、検診結果が「精密検査必要」の場合は、必ず乳腺外科を受診して必要な検査を受けてください。そのことが自覚症状のない乳がんの早期発見や安心につながります。

Q6:遺伝するのでしょうか?
遺伝性乳がん卵巣がん症候群(=HBOC)をはじめとして、全乳がんの約10%が遺伝性といわれています。2013年にハリウッド女優アンジェリーナ・ジョリーさんが、リスク低減手術(乳がんを発症する前に乳房切除など)をされたことで話題になりました。
適応基準を満たす方には、当科でもBRCA 遺伝子検査を行いリスク低減手術の提案などを行っています。
「乳がんは手術をしたら治りますよね?」と、よく患者さんに尋ねられます。ですが、一部の乳がんを除いては、再発予防を目的に患者さんの病態に応じた全身治療(ホルモン剤、抗がん剤、分子標的薬、放射線治療など)を行うことが必要です。いずれにしても早期発見が大切ですので、当院健診センターでは検診に力を入れています。また、乳腺外科では検診はもとより、患者さんに応じた精査や治療を相談の上、提供しています。
ぜひ、ブレスト・アウェアネスを心がけて、検診を受け、早期発見・治療でご自身の体を大切にしましょう!


安岡 利恵 (やすおか りえ)

済生会京都府病院 乳腺外科部長 1993年徳島大学医学部卒業、京都府立医科大学附属病院第一外科入局。済生会滋賀県病院などの関連施設、京都府立医科大学附属病院内分泌・乳腺外科 助教などを経て、2021年4月から済生会京都府病院に着任。日本外科学会認定指導医・専門医、日本乳癌学会認定指導医・専門医・認定医、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会責任医師、京都府立医科大学附属病院学外講師、日本消化器外科学会認定指導医・専門医など。

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