子宮頸がんとHPVワクチン

2022年07月01日(金曜日)

突然ですが、子宮頸がんで亡くなる人が増えています!

2018年に子宮頸がんと診断された人は10,978人、2020年に子宮頸がんで亡くなった人は2,887人で、最近は増加傾向になっています。
人口10万人あたりの罹患率は16.9 例、人口10万人あたりの死亡率は4.6人です。

部位別 死亡数(全国)・罹患数(全国)

さらに、30歳~40歳台の若い世代で子宮頸がんになる人が増えています。

子宮頸がん年齢階級別罹患率

  • 子宮頸がんは若い人がかかる病気に変化しています
  • 30歳代で子宮頸がんになる人も増えています
  • 子宮頸がんになると治療が必要となり、妊娠に影響します
  •  

子宮頸がんの原因は?

 子宮頸がんの大部分はヒトパピローマウイルス(Human Papilloma Virus,  HPV)に感染することにより発症します。
 ヒトパピローマウイルス(以下HPVと略します)は200種類以上存在し、そのうち子宮に感染して子宮頸がんの原因になるHPV、ハイリスク ヒトパピローマウイルス は以下の13種類がわかっています。

特に危険なタイプ 16型、18型
次に危険なタイプ 31型、33型、35型、45型、52型、58型
その他 39型、51型、56型、59型、68型

 わが国の子宮頸がんの70%はHPV16型もしくは18型が関与しているといわれています。
 これらのハイリスクHPVは性交渉で感染し、性交経験のある女性は一生に1度はHPVに感染するといわれますが、その90%は自身の免疫の力でウイルスを排除します。ウイルスを排除できず持続感染がおこっている場合、一部の人に子宮頸部異形成と言われている前がん状態が発生し、適切な対処をしなければ数年かかって子宮頸がんに進展していきます。

HPVワクチンの種類は?

 HPVワクチンはHPVに感染するのを防ぐ効果があり、HPVに感染しなければ子宮頸がんにはなりません。国内で承認されているHPVワクチンには249の3種類があります。
 2価ワクチン(サーバリクス)は特に危険なタイプのHPV-16型と18型の感染を予防します。
 4価ワクチン(ガーダシル)はHPV16型と18型以外に尖形コンジローマ(外陰部にできる良性のイボ、性行為で感染します)の原因となる6型・11型を含むの4つの型の感染を予防するワクチンで、唯一 男性への接種も承認されています。
 2020年7月に承認、2021年3月から販売が開始された9価ワクチン(シルガード)は、16型・18型・6型・11型以外にさらに5つの型(31・33・45・52・58型)の感染を予防できますが、公費助成の対象にはなっていません。
 これらワクチンはHPVの感染を予防するもので、すでにHPVに感染している細胞からHPVを排除する効果は認められません。したがって、初めての性交渉を経験する前に接種することが最も効果的です。
 現在わが国では2価と4価ワクチンが公費助成の対象になっており、HPV16型と18型の感染を予防しますが、他の型の感染も少しばかり予防することがわかっており、17歳までにこれらのワクチンを受けた場合、進行した子宮頸がんにかかるリスクは88%低下すると試算されています。9価ワクチンはHPV感染を97%予防するといわれていますが、公費助成の対象でないため、接種を希望される場合は自費になります。

子宮頸がんは予防できるがんです!

WHO(世界保健機構)は世界から子宮頸がんをなくすために下記の介入目標を決定しています。

  1. 15歳までの少女の90%にHPVワクチンを接種する
  2. 70の女性が35歳と45歳の時に確実性の高い子宮頸がん検診を受ける
  3. 90の子宮頚部病変を指摘された女性が適切な治療とケアを受ける

 全世界ではHPVワクチン接種率が80%を超えている国々がありますが、日本のHPVワクチン接種率はわずか0.4%です。
 ワクチン接種率が高い国々ではHPVの感染者の減少や進行子宮頸がんの減少が報告されています。したがって、HPVワクチンを受け、ワクチンの効果が100%ではないので、子宮頸がん検診をうけ、前がん病変が見つかった場合には適切に対処すれば子宮頸がんに進展することはありません。

全年齢のHPVワクチン接種率(2014-2016)

「全世界的な公衆衛生上の問題:子宮頸がんの排除」にむけたWHOスライドの日本語訳版(日本産科婦人科学会ホームページ)より抜粋

HPVワクチンプログラムとワクチンの副作用について

 HPVワクチンは2009年12月に接種が開始され、2013年4月から定期接種(無料で摂取できる)となりましたが、ワクチン接種後の有害事象の報告が多くなり、行政は2013年6月からワクチン接種を積極的にお勧めする(積極的勧奨)ということを控えていました。しかし、ワクチン接種後の全身の痛みや、しびれ、脱力、意図しないのに動いてしまう不随意運動等の重い健康障害がHPVワクチンの成分の直接の副作用ではなく、他の種類のワクチン接種や外傷、骨折、注射針の刺激がきっかけでも発症し、頻度は極めてまれであることが判明したため2022年4月からHPVワクチン定期接種の積極的勧奨を再開しています。

定期接種対象者
小学校6年~高校1年相当の女子

キャッチアップ接種対象者
1997~2005年度生まれの女性(2025年3月までは無料です)

定期接種対象ワクチン
3回接種します。接種方法は筋肉注射です。
・2価(サーバリックス®)1回目の1か月後に2回目を接種、1回目の6か月後に3回目を接種
・4価(ガーダシル®) 1回目の2か月後に2回目を接種、1回目の6か月後に3回目を接種

接種後にみられる症状と頻度

発生頻度 サーバリックス®(2価HPVワクチン) ガーダシル®(4価HPVワクチン)
50%以上 注射部位の痛み(99.0%)、発赤(88.2%)、膨張(はれ)(78.8%)、疲労感 注射部位の疼痛(82.5%)
10~50%未満 かゆみ、腹痛、筋肉痛・関節痛、頭痛等 注射部位の膨張(はれ)(25.4%)、紅斑(30.2%)
1~10%未満 じんましん、めまい、発熱等 注射部位のかゆみ・出血・不快感、頭痛、発熱
1%未満 注射部位の知覚異常、感覚が鈍くなる、全身の脱力 硬結、手足の痛み、骨格筋硬直、腹痛、下痢
頻度不明 手足の痛み、失神、リンパ節症等 疲労・倦怠感、失神、筋肉痛・関節痛、嘔吐等

1回目、2回目で気になる症状が現れた場合はそれ以降の接種をやめることができます。

ワクチン接種ストレス関連反応

 ワクチンの接種前や接種した時、また接種直後に見られる動悸(頻脈)・息切れ、口の喝き、手足のしびれや、めまい・過換気・失神等、そして、接種後のしばらく経ってから見られる脱力・麻痺・異常な動き・不規則な歩行、言語障害等などの症状が含まれます。ワクチン接種後は、ワクチンが直接の原因ではない症状も出現し、またワクチンの接種に伴う免疫の付与以外の反応(副反応)もあります。これらの症状が出現した場合は接種を行った医療機関に相談してください。 まれに重い健康被害が生じる場合があり、そのような場合は法律に基づく救済(医療費や障害年金などの給付)が受けられます。
 原則として、新型コロナワクチンとそれ以外のワクチンは、同時に接種できません。互いに、片方のワクチンを受けてから2週間後に接種できます。

当院では毎週金曜日午後ワクチン外来を行っています。
ご予約は、京都済生会病院 075-955-0111(代)平日14時~17時におかけ下さい。

産婦人科・周産期センター

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