気になる 手足のしびれ、 こしの痛み

2022年09月14日(水曜日)

手足がしびれる。こしが痛い。ご家庭や仕事場でもよく耳にする不快な症状。このような症状があると、気分が憂鬱になり、生活にも支障が出てくることがあります。気になる手足のしびれ、こしの痛みについて整形外科の野々村卓医師に聞きました!

整形外科(脊椎センター)
野々村卓


脊椎に関係する病気の多くは、加齢によって背骨が変形したり、靱帯が分厚くなったりすることで神経が圧迫されて症状がでます。近年の高齢社会の進行に伴い、患者さんの数も増加しています。

脊椎疾患の主な症状


腰痛

腰痛は多くの人が抱えている症状です。厚生労働省の調査では、自覚症状としての腰痛は男性で1 位、女性で2 位との結果がでています。腰痛の原因にはさまざまなものがありますが、多くは腰のクッションの役割をしている椎間板や、腰椎の関節の老化によって起こります。悪い姿勢や、体の柔軟性の低下などが重なると腰痛がさらに起こりやすくなったり、悪化したりします。

脊柱管狭窄症

腰痛の原因となる病気としては、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、がんの骨転移、感染症、結核、骨折などがあり、症状が重篤となりやすいため早期の治療が必要な場合もあります。いわゆる「ぎっくり腰」とよばれる腰痛では、一般的に経過は良好で、1~2 週間で痛みは和らぎます。しかし、安静にしていても激しい痛みがある場合や、痛みが長期間続いて軽減しない場合、腰痛以外に足の痛みやしびれなどの症状が出る場合には、特別な病気の可能性があるため注意が必要です。
腰痛の治療は、原因を的確に診断することが大切です。

椎間板ヘルニア


手足のしびれ

手足のしびれ感は、脊髄や末梢神経などの神経組織への障害から生じます。
肩こりや筋肉痛などでも一時的にしびれを感じることがありますが、時間がたてば自然におさまってくることが多いです。糖尿病や栄養障害、電解質の異常、動脈硬化などでもしびれ感が生じることがあり、これらは内科的治療などが必要です。

脊椎疾患のなかでは、頚椎症、靭帯骨化症、腰部脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニアなどで脊髄や神経が圧迫されることで、しびれ感や感覚障害が起こり、整形外科での治療が必要となります。しびれ感の程度が強くなる場合や範囲がひろがってくる場合には、神経の状態を詳しく調べる検査が必要です。

手足のしびれ


手足の運動障害

手の指先で細かい作業ができない、具体的には箸が使いにくくなった、ボタン掛けがしにくくなったなどの症状は、手指の巧緻(こうち)運動障害といわれる症状で、頚椎の神経症状の特徴です。また、肩を挙げたり肘を曲げたりする力が弱くなった、握力が落ちたなどの筋力が弱くなる症状も神経障害のひとつです。

足にでる症状では、ふらつきやすくなった、つまづきやすくなった、階段を下りる時に手すりが必要、つま先立ちがやりにくくなった、スリッパがよく脱げるなどの症状が特徴です。これらの運動障害・筋力低下の主な原因は、脳や脊椎の中を通っている脊髄神経、または脊髄から枝分かれした神経根の障害で、頚椎症性脊髄症、靭帯骨化症、腰部脊柱管狭窄症などで起こります。これらの症状が次第に強くなってくる場合は、正しい診断を受け、早期の治療を開始する必要があります。


歩行障害

歩くことに支障が出る病気はいくつかありますが、脊椎が原因となるものでは腰部脊柱管狭窄症が代表的な疾患です。安静にしていると症状はありませんが、長時間立っていたり、歩いたりすると下肢に痛みやしびれ感がでます。腰の骨の中を通る神経の通り道が狭くなって、神経が圧迫されることが原因です。また、足の力が抜けて転倒しやすくなる、足首や足の指に力が入りにくくなるなどの症状もでることがあります。立ち止まってしゃがんだり、前かがみで休むと楽になってまた歩くことができるという症状が特徴的であり、間欠跛行(かんけつはこう)と呼ばれる症状です。

歩行障害


さいごに

脊椎疾患は症状が悪化すると、手足にしびれや痛みがでたり、力が入らなくなったり、歩きづらくなったりして、日常生活動作に支障がでてきます。重度の症状になると介護が必要な状態になり、患者さん本人だけではなく、家族をはじめとする周りの方々にも負担がかかります。
重篤な症状となる前に、早期に治療を開始することが大切です。気になる症状があれば早めに整形外科を受診していただくことをおすすめします。

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野々村 卓 (ののむら まさる)

京都済生会病院 整形外科 脊椎センター センター長
2006年京都府立医科大学卒業、公立南丹病院研修医を経て、2008年京都府立医科大学整形外科入局。京都府立医科大学附属病院、公立南丹病院、京都第二赤十字病院などで勤務し、2022年4月から京都済生会病院へ着任。日本整形外科学会認定整形外科専門医・脊椎脊髄病医、日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科指導医 など 掲載の「京なでしこ」を見る

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