子宮頸がん―9価ワクチンのシルガードが公費助成対象となりましたー

2023年10月31日(火曜日)

はじめに

子宮頸がんは腟の奥の子宮の入り口(子宮頸部)にできるがんです。
2020年、全世界では60万4千人の女性が子宮頸がんと診断され、34万2千人が子宮頸がんで命をおとしています。また、子宮頸がんは乳がん、大腸がん、肺がんに次いで第4位の罹患数、死亡数となっています。
日本では年間1万1千人が子宮頸がんと診断され、2900人が子宮頸がんで亡くなっています。
しかし、子宮頸がんはワクチンでの予防が可能ながんです。


1.わが国では子宮頸がんは増えています!

 わが国では 子宮頸がんと診断された人は2018年厚労省広報よれば1990年代~2000年初頭には減少していましたが、近年増加傾向です(下図)。

 それに従って死亡率も増加しており、公益財団法人がん研究振興財団がんの統計2021によれば子宮頸がんは子宮体がんや乳がん、すい臓がんとともに年齢調整死亡率が増加しています。胃がん、大腸がん、肝臓がんなど、国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」では年齢調整死亡率は減少してきています。

国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん罹患モニタリング集計(MCIJ)より作図)

 年齢別の罹患数を見てみると(下図)、2005年までは50歳~55歳が発症のピークでしたが、2010年以降では3545歳が発症のピークで、近年若い人の子宮頸がんが増加していることがわかります。

国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん罹患モニタリング集計(MCIJ)より作図

2.子宮頸がんの原因

 HPVは性交で感染するため、性交の経験がある女性の8割はHPVに感染するといわれています。
いったん感染しても免疫の力でウイルスをやっつけたり、封印したりできるので、そのような場合は子宮頸がんにはなりません子宮頸がんのほとんどはヒトパピローマウイルス(HPV/Human Papilloma Virus))の感染が原因でおこります。

 しかし、HPVの感染が持続し、ウイルスが体の中(子宮頸部)で増えていくと子宮頸部異形成(子宮頸部上皮内腫瘍)という状態を経て子宮頸がんになります。子宮頸部異形成から子宮頸がんになるには5年~10年かかるといわれていますが、中には急激に進行してがんになるケースもあります。HPVの持続感染があっても子宮頸がんになるのは10%ぐらいと見積もられており、子宮頸がんを発症しない場合も多々あります。

 HPVは現在120種類ぐらいあることがわかっていて、その中で子宮頸部に感染してがんをひきおこす可能性のあるウイルス(ハイリスクHPV)は以下の13種類がわかっています。
 16183133353945515256585968 
この中で16型と18型は日本人の子宮頸がんの7割に関係しているといわれており、はじめに作成されたHPVワクチンも16型と18型の感染を予防することが可能です。

 HPVに感染しても何の症状もでません。感染が起こってしばらくすると感染した子宮頸部の細胞に正常とは異なる形の変化がおこります。この時期に子宮頸がん検診(子宮頸部細胞診)を受けると結果はASC-US(意義不明な異形扁平上皮細胞)となりますが、ほとんどの場合数か月後にはHPVは排除され、子宮頸部細胞診は正常(NILM)になります。

 HPVを排除できずに持続感染がおこり、HPVによる細胞の変化(細胞の異型)が進むと異形成という状態になります。異型細胞は上皮内に限局しているので これを子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)と呼んでいます。CINは異型の程度やそのひろがりによって3段階に分けられ、CIN1は軽度異形成に、CIN2は中等度異形成に、CIN3は高度異形成と上皮内がんに相当します。CIN1は約70%が2年以内に消失し、約10%が5年以内にCIN2CIN3に進展するといわれています。これに対し、CIN3は自然に消えてしまうのは約20%で、2年以内に30%が浸潤がんになるといわれています。
子宮頸がんになるともはやHPVは検出されなくなり、HPVの遺伝情報(DNA)ががん細胞のDNAに組み込まれた状態になります。


3.子宮頸がんの症状

 上皮内がんを含む初期の子宮頸がんにかかっても、何も症状がなく、子宮頸がんになっているかどうかは子宮がん検診でしかわかりません。
 がんが進行して、炎症等が加わると不正出血の症状があらわれます。特に性交後の出血が特徴的でこれを接触出血と呼んでいます。 
 子宮頸がんがさらに進行すると子宮頸部ががんに置き換わってくずれてくるため血液がまじった悪臭のある膿のようなおりものがでたり、がんが骨盤の神経を巻き込むと痛みがでたりします。骨に転移すると腰痛や下肢痛、背部痛などがおこります。


4.子宮頸がんの診断

 スクリーニング検査として子宮頸部の細胞診検査を行います。これは子宮の入り口付近の頸部をブラシなどで擦って細胞を集め、顕微鏡でがん細胞や前がん病変の細胞を見つける検査です。この検査を子宮頸がん検診と呼びます。
 細胞診の結果、異形成やがんの疑いがある場合には、専門の施設でコルポスコピーという拡大鏡で病変部(子宮の入り口)の観察を行いながら子宮頸部の組織を採取(生検)し、顕微鏡で検査する病理組織検査を行います。これにより異形成や上皮内がん、または浸潤がんであるかの診断を行います。
 子宮頸がんにはいくつかの組織型があり、一番多いのは扁平上皮がんで、全子宮頸がんの約75%をしめています。あとは分泌腺の細胞から発生する腺がんなどです。
 子宮頸がん(浸潤がん)と診断されたら、次に内診や画像検査(CTMRIPETなど)を行い、子宮の周囲にある組織へのがんの広がりやリンパ節・他臓器への転移の有無をしらべます。これらの結果に基づきがんの進行期(ステージ)を決定します。
 また腫瘍マーカー(SCC抗原、CA125CEAなど)の測定も行われますが、腫瘍マーカーだけでは診断できないので、治療結果の評価の面で活用されています。


5.子宮頸がんの臨床進行期

子宮頸がんは進行の度合いにより1期(ステージ1)~4期(ステージ4)に分けられます。
進行の度合いによって治療法が変わってきます。

また、臨床進行期別の5年生存率(おなじ病気と診断された人のうち5年間生きている人の割合)はステージ1では95%(ステージ1の子宮頸がんの人が100人いるとすればそのうち5人は5年以内に子宮頸がんで亡くなるということです)、ステージ2では79%、ステージ3では62%、ステージ4では25%といわれています。(20102011年のデータによる)

ステージ1(Ⅰ期)
子宮頸部にとどまり子宮から外には浸潤していないがん 5年生存率は95%

A 微小浸潤がん がんの浸潤の深さが5㎜以内
 ⅠA1 深さ3㎜以内
 ⅠA2 深さ35
B がんの浸潤の深さが5㎜を超える
 ⅠB1 がんの最大径が2㎝以下
 ⅠB2 がんの最大径が2㎝をこえるが4㎝以下
 ⅠB3 がんの最大径が4㎝をこえる

ステージ2(Ⅱ期)
がんは子宮を超えて拡がるが腟の下2/3は超えないか、骨盤の骨までは達しない 5年生存率は79%

A がんが腟に浸潤 腟の上2/3以内にとどまる
 ⅡA1 がんの最大径が4㎝以下
 ⅡA2 がんの最大径が4㎝をこえる
B がんが子宮傍結合織に浸潤するが、骨盤壁に達しない

ステージ3(Ⅲ期)
がんの浸潤が腟壁の下1/3に達する、もしくは骨盤壁にまで達する、もしくは水腎症や無機能腎の原因になっている、もしくは骨盤リンパ節や傍大動脈リンパ節に転移をみとめるもの 5年生存率は62%

A がんが腟壁の下1/3まで達するが、骨盤壁までは達しない
B 子宮傍結合織浸潤が骨盤壁に達する、もしくは明らかな水腎(腎臓が腫れて大きくなる)がある
C 骨盤リンパ節や傍大動脈リンパ節に転移を認める
 ⅢC1 骨盤リンパ節のみに転移を認める
 ⅢC2 傍大動脈リンパ節にも転移を認める

補足:
子宮頸がんが転移するリンパ節は後腹膜腔(腹膜の後ろ側にあるスペース)に分布しており、腹部大動脈や大静脈、腎臓がこのスペースに存在しています。腹部大動静脈はへその高さで左右の総腸骨動静脈に分かれ、分岐より足の方で血管に沿って骨盤リンパ節が存在し、分岐より頭の方で大静脈や大動脈に沿って傍大動脈リンパ節があります。

ステージⅣ(Ⅳ期)
がんが膀胱粘膜または直腸粘膜へ浸潤しているか、骨盤をこえてほかの臓器に転移するもので、5年生存率は25%です。

A がんが膀胱粘膜または直腸粘膜へ浸潤しているもの
B 小骨盤をこえてひろがるもの


6.子宮頸がんの治療

子宮頸がんの治療は大きく分けて手術療法と放射線療法がありますが、がんの進行の度合い(臨床進行期)によって選択される治療法が異なります。

手術療法について

 我が国では子宮頸がんの標準の術式は広汎子宮全摘出術、両側付属器切除術、そして後腹膜リンパ節郭清です。
 広汎子宮全摘出術は膀胱や直腸を支配する神経が通っている子宮傍結合織を広く切除するため、手術の後遺症として排尿障害(尿が出にくい、または出ない)や排便障害(便秘 何回もに分けて便が出る)が起こります。
 両側付属器切除は左右の卵巣と卵管を摘出する術式のため、閉経前に卵巣を摘出すると女性ホルモンが分泌されなくなるため更年期障害があらわれます。
 また、後腹膜リンパ節郭清(骨盤リンパ節と傍大動脈リンパ節)を行うと足のリンパ浮腫(むくみ)やお腹の中にリンパ液がたまるリンパ嚢胞を発生することがあります。

 このため、臨床進行期がIA期までの初期の子宮頸がんには手術後遺症を避けるため縮小手術を行なったり、卵巣に転移するリスクの低いIB2期までの扁平上皮がんでは卵巣を温存する手術方法が選択されます。

<IA1期の手術療法>
 浸潤の深さが3㎜以内のIA1期の場合で将来妊娠を希望する場合には子宮頸部円錐切除を行ないます。IA1期で妊娠を希望されない場合は単純子宮全摘出術を行います。
 単純子宮全摘出術は子宮筋腫などの良性の疾患に対して行われる術式で、子宮だけを摘出する術式で膀胱や直腸にいく神経を切断するわけではないので、広汎子宮全摘出術に見られる術後の後遺症(排尿障害や便秘)はありません。

<IA2期の手術療法>
 浸潤の深さが3㎜を越えるが5㎜までのIA2期の場合、骨盤のリンパ節への転移は010%と報告されています。このため準広汎子宮全摘出術と骨盤リンパ節郭清を行うのが一般的です。
 将来妊娠を希望する場合は広汎子宮頸部切除術に骨盤リンパ節郭清を追加する術式や円錐切除術に骨盤リンパ節郭清を追加する方法があります。  
 広汎子宮頸部切除術は子宮の体部(赤ちゃんが育つ場所)を残して子宮頸部だけを周囲の組織(子宮傍結合織)を含めて摘出する方法です。

 広汎子宮頸部摘出術後の妊娠率は2124%と報告されており、その半数以上は体外受精胚移植のような高度不妊治療(生殖補助医療 ART)によるものです。妊娠が成立した場合でも流産率は約25%、早産率は約60%との報告があります。

<IB期の手術療法>
IB期は浸潤の深さが5㎜以上で子宮の頸部に限局している(子宮の外にはでていない)がんですが、腫瘍の最大径によって3つに分類されています。IB1は腫瘍最大径が2㎝以下、IB2は2㎝を超えるが4㎝以下、IB3は4㎝を超える場合です。

 IB期の子宮頸がんには原則として標準術式(広汎子宮全摘出術、両側付属器切除術、後腹膜リンパ節郭清)を行います。
 広汎子宮全摘出術は子宮の左右の傍結合織を広範囲に切除しますが、この部分に膀胱や直腸を支配する神経が通っているため、広範囲な切除で神経が切断されてしまい、術後に排尿や排便の障害がおこりますが、がんの進行の度合いによっては神経を温存する手術手技を選択できる場合があります。

 両側付属器切除を行うと卵巣卵管を摘出することになるため、若い人にとっては更年期障害だけでなく、骨粗鬆症、心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中等)、糖尿病や認知症のリスクが増加するとの報告があります。IB期の扁平上皮がんでは卵巣転移の頻度は00.5%と言われており、若年の女性のIB2期までの扁平上皮がんでは卵巣を摘出せずに温存することが推奨されています。 
 最近の報告では、体に与える影響が少ない腹腔鏡手術やロボット手術は開腹手術に比べると術後の生存率が悪いとされており、現段階では開腹による広汎子宮全摘出術が標準治療とされています。

<II期の手術療法>
 IIA期はがんが腟に拡がるけれど腟の下1/3を超えない場合で、腫瘍の最大径によりIIA1とIIA2に分けられています。IIA1期は腫瘍の最大径が4㎝以下、IIA2期は腫瘍の最大径が4㎝を超える場合です。
 IIB期は腟への拡がりの有無にかかわらず、子宮傍結合織に浸潤している場合です。
 手術はIB期と同様、標準術式(広汎子宮全摘出術、両側付属器切除術、後腹膜リンパ節郭清)を行います。

 摘出した子宮、付属器、リンパ節は病理組織検査でがんの拡がりや転移の有無につき詳しく調べられます。この結果再発のリスクが高いかどうかを判断し、再発リスクが高いケースについては術後の補助療法を行っています。リンパ節転移がある、または子宮傍結合織にがんが広がっている場合は再発リスクが高いため補助療法をおこなうことが多いです。
 術後の補助療法は放射線治療、または同時化学放射線療法があります。
 IIB期で腫瘍が大きい場合は初めから放射線治療を選択するケースが近年増加しています。

 III 期とIV期については原則として手術は行いません。手術でがんを完全に取り除くことが不可能であるからです。ただし、ⅣA期で子宮傍結合織にがんが浸潤していないケースで、膀胱または直腸にのみがんが広がっている場合に限って膀胱または直腸と子宮を同時に摘出する骨盤除臓術を行うことがあります。膀胱にがんが広がっている場合は膀胱を摘出して尿路変更(回腸導管もしくは尿管皮膚瘻)を、直腸にがんが広がっているときは直腸と子宮を摘出して人工肛門を造設します。この手術は身体に与える影響がたいへん大きいため、手術による死亡もあります。



放射線治療について

 子宮頸がんの75%は扁平上皮がんという組織型でそれ以外の大部分は腺がんです。扁平上皮がんには放射線治療がよく効くため放射線治療だけで子宮頸がんを治癒させることが可能です。 
 放射線療法だけで治癒を目指す治療法は根治的放射線療法です。この治療は骨盤の外から照射する外照射と腟および子宮頸部(子宮の入り口)に放射線を出す線源を挿入して照射する腔内照射を組み合わせて行います。

 外照射は11回放射線を数分間照射します。たいていの場合週5日照射して、2日休みというスケジュールで行っている施設が多いです。

 これに対し、腔内照射は器具を腟と子宮の中に留置し、放射線を出す線源を器具につないだチューブをとおしてラルスから腟と子宮の中に運び、照射します。ラルスという装置は中に放射線を出す線源が格納されており、チューブをとおして線源を目的の場所(子宮がんのばあいは腟と子宮頸部)に運ぶシステムです。
 たいていの場合は週1回の照射で合計24回の治療となります。外照射とちがって腟と子宮内に器具が挿入されるので、挿入時の疼痛や不快感があり、局所麻酔剤のゼリーを使用したり、鎮痛剤や鎮静剤を併用する場合もあります。

 実際、IB期~IIA期の子宮頸がんでは手術による治療成績と根治的放射線治療による治療成績はほとんどかわりません。 

 また、放射線治療は手術のあと、再発を予防する目的で(術後補助療法として)外照射を行う場合や、子宮頸がんが進行して手術ができないIII期やIV期に対して放射線療法と同時に抗がん剤を使用する、同時化学放射線療法が選択されます。

 放射線治療のメリットは手術の後遺症である排尿障害などは起こらず、おなかにも傷はできません。全身状態が悪い場合や合併症や高齢のため手術ができない人に対しても行うことができます。
 ただ、放射線療法にも手術とは異なった副作用や後遺症があります。放射線治療中や治療終了直後に見られる副作用は、吐き気やだるさ(つわりのような症状と言われます)、皮膚炎、下痢、そして血液検査でしかわからない白血球数の減少・貧血などがあります。
 外照射は骨盤の広い範囲に放射線が照射されるため、卵巣にもかなりの量の放射線があたり、卵巣の機能は廃絶します。閉経前の若い人にとって卵巣はホルモンを出すことができなくなってしまい、更年期障害の症状が出現します。
 閉経後の人はもともと卵巣が働いていないため、さらに更年期障害がひどくなるということはありません。
 放射線治療終了後数カ月から1~2年で現れてくる晩期合併症には放射線膀胱炎(血尿や頻尿、残尿感、排尿痛など)や放射線直腸炎(血便、下血)があります。



重粒子線治療

 腺がんは放射線感受性が扁平上皮がんに比べると悪く(放射線治療があまり効果を期待できない)治癒しにくいとされています。20224月に手術による治療が難しい進行した子宮頸部腺がんに重粒子線治療が保険適応となりました。
 放射線治療に通常用いられているのはX線で電磁波の一種ですが、重粒子線はわが国では炭素線を用いていて、炭素原子から電子を取り除いで原子核だけにしたものを加速することにより大きなエネルギーを出すことができます。
 X線は照射した体の表面ちかくでもっとも線量が強く、深くすすむにつれて減弱するため、身体の深い場所を治療する際に放射線が患部にとどくまで正常の組織を障害する可能性が高いです。それに比べると重粒子線は照射するときのエネルギーを変えることにより、ある深さに大量の線量を照射することができ、その前後に照射される線量は少ないため、正常組織への障害を少なくすることができます。

 なお、当院では子宮頸がんの放射線治療は行っておりませんので、設備の整った他施設へ紹介させていただいています。


7.子宮頸がんの予防

 子宮頸がんはHPVに感染することにより発症する場合がほとんどであるため、HPVに感染しなければ子宮頸がんにはなりません。HPVワクチンはHPVに感染するのを予防するワクチンで、すでにHPVに感染している細胞からHPVをなくす効果はありません。したがって、初めての性交渉を経験する前に接種することが最も効果的です。
 ただ、HPVワクチンは子宮頸がんを引き起こす13種類のHPVすべてを予防するわけではありません。子宮頸部に感染してがんをひきおこす可能性のあるハイリスクHPVは 16183133353945515256585968  13種類が現在のところわかっていますが、国内で承認されているHPVワクチンには249の3種類があり、最大で9種類のHPVの感染が予防できます。
 これら3種類のワクチンは国の定期接種の対象となっており、定期接種を受けることができる年齢は下記の図のとおりです。

 2価ワクチン(サーバリクス)は子宮頸がんでいちばん頻度が高い16と18を予防します。

 4価ワクチン(ガーダシル)は16と18に加えて尖形コンジローマ(外陰部にできる良性のイボ、性行為で感染します)の原因となる6と11を含むの4つの型の感染を予防するワクチンで、唯一 男性への接種も承認されています。

 9価ワクチン(シルガード9)は、16・18・6・11以外にさらに5つの型31・33・45・52・58の感染を予防でき、HPVによる子宮頸がんの前がん状態(CIN2~3、上皮内腺癌など)を予防する効果は95%と報告されています。前がん状態になるのが予防できたら子宮頸がんにはなりません。
 2023年4月1日より9価ワクチンのシルガード9が定期接種の対象となりました。

各々のワクチンの接種スケジュールは下記の図のとおりで、サーバリクスは1回目と2回目の間が1カ月、3回目は1回目から6カ月を目安にします。ガーダシルとシルガード9は1回目と2回目の間隔が2カ月、3回目は1回目から6カ月開けて接種します。シルガード9のみ9歳以上で15歳未満の女子に接種する場合は2回接種で効果があります。

 9価ワクチンのシルガード9は子宮頸がんに対して90%以上の予防効果がありますが、100%ではありません。また、HPVの関与のない子宮頸がんもわずかながら存在するため、子宮頸がん検診を受ける必要性があります。前がん状態で見つかって対処できれば子宮頸がんに進行することはありませんので、HPVワクチンの接種と子宮頸がん検診のセットでHPV関連の子宮頸がんは地球上から撲滅することが可能と思われます。



当院では毎週金曜日の午後に子宮がん検診とワクチン外来を開いています。
予約は月~金曜日14:00~17:00に電話でお願いします
075-955-0111(代)


加藤 淑子 (かとう よしこ)

産婦人科 顧問
産婦人科・周産期センター

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