あなたの大腸は元気ですか?

2025年03月13日(木曜日)

「もっと早く大腸カメラを受けていたら...」
大腸がんは、早期に発見して治療すれば、ほぼ治癒できる病気です。
内視鏡センターからみなさんに大切なメッセージをお届けします。

内視鏡センター看護師・消化器内視鏡技師 廣山 恵美

異変を放置していませんか?

内視鏡センター看護師、消化器内視鏡技師として診療の場にいると、胃がんや大腸がんを発見することも少なくありません。
大腸がんが見つかる人は
「便に血が混じっていたのに、痔だと思って放置していた」
「健康診断の結果、便潜血を指摘されたけれど放置していた」
「健康が取り柄で、病院には検診も含めかかったことがない」、
そして「大腸カメラを受けたことがない」人がほとんどです。
比較的若い方もいます。
特に進行大腸がんでは、大腸が閉塞し排便できない状態になるため、緊急的に金属ステントを挿入して、排便を促すこともあります。また、患者さんの多くは外科手術になり、中には人工肛門(ストーマ)になる人もいます。身体的はもちろん経済的、社会的にも負担がかかり、進行がんは再発のリスクも伴います。
もっと早く下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)を受けていたら回避できたのに...と、いつも悔やまれます。

大腸がんとは

日本では、国立がん研究センターが、40歳以上の人に大腸がん検診を推奨するガイドラインを定めています。
男女とも50代から、がんの罹患率が増加し始め、高齢になるほど高くなります。2023年の死因順位の第1位は、悪性新生物(がん)(24.3 %)であり、部位別がん死亡数を死因順位別に見ると、トップは男性が肺がん、女性は大腸がんです(大腸がんの死亡数は53,131 人:男性27,936人、女性25,195 人)(表1)。
また、2020年の罹患者1位は大腸がんで、男女共に増えています(表2)。
早期大腸がんの5年生存率は90%以上であり、早期診断による生存の可能性が非常に高い一方で、進行する前に発見される大腸がんは、全体の約40%前後にとどまっています。

大腸がんの症状

大腸がんの主な症状には、血便と便秘がありますが、早期の大腸がんは無症状であることが多いです。
血便は、肛門に近い直腸やS状結腸の大腸がんでは真っ赤な新鮮血が便に付着することが多く、痔出血など肛門疾患との鑑別が必要です。痔だと思って放置していて、がんが進行してしまった患者さんを何人も見ています。
肛門に近い直腸やS状結腸の大腸がんでは、便秘や腸閉塞をきたしやすいです。
上行結腸や横行結腸では便秘症状に乏しく、発見が遅れる傾向にあります。したがって、がんのできる場所により症状が異なります(図1)。
自分の便を見ない、水洗トイレですぐ流すから見ていないという方がいますが、便は健康のバロメーター。性状や色調、においなどセルフチェックをする習慣をつけましょう。また、便に血が混じる、便秘や下痢が続く、下腹部痛がある、便が細くなる、残便感がある、貧血、吐き気など、何でもいいので少しでも異変を感じたら、消化器内科を受診してください。

大腸がんの症状

大腸がんの検査には、便潜血検査、腫瘍マーカー、CT検査、造影CT検査、大腸3DCT検査(CTコロノグラフィー)そして大腸カメラなどがあります。
大腸カメラを受けるのがこわい、嫌だという方は、まずは大腸カメラ以外の検査を受けることをお勧めします。しかし、大腸カメラ以外の検査では、組織生検やポリープ切除治療ができません。状態に応じた検査の選択が必要です。
大腸カメラは、胃カメラと違い前処置が必要で、羞恥心や不安も強く敷居の高い検査なので、検診で便潜血2回法を受けてください。1回でも陽性が検出されたら自覚症状がなくても、すぐに大腸カメラを受けることが大切です。
大腸がんは、早期に発見して治療すれば、ほぼ治癒が期待できます。つまり早期であれば内視鏡治療で完治できるのです。

早期発見、早期治療が大事です!

大腸がんの治療

大腸がんの治療は、進行度により異なります。具体的には、早期がん(粘膜内にとどまる、リンパ節や他臓器への転移の可能性がほぼないもの)については、EMR(内視鏡的粘膜切除術)やESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)で切除可能です。
一方、内視鏡治療が適応困難ながんについては、外科手術や、手術が困難な場合(がんを完全に取り切れない場合)は化学療法などによる治療を行います。
原則は、ガイドラインに基づいた治療法を医師より提示しますが、最終的には、患者さんの希望や生活環境、年齢を含めた身体の状態なども総合的に検討し、担当医と話し合って決めていきます。
また、治療方針については、各診療科のミーティング(キャンサーボードなど)でも検討を行います。

大腸がんの予防、再発予防も含めて

大腸がんの予防には、食物繊維を多くとり、バランスのよい食事を心がけることが必要とされています。アルコールは大腸がんの危険因子であるといわれ、多量の飲酒、喫煙なども控えたほうがよいです。女性では、加工肉や赤身肉の摂取により大腸がんが発生する危険性が高くなる可能性があるといわれています。(私自身も加工肉が大好きなので、大腸がん検診もしくは大腸カメラを受けています。)そして、ウォーキングなどの適度な運動にも予防効果があるといわれています。これらは、一般的ながん予防で、食事と運動などの生活習慣が大切であると改めて気づかされます。

また、友人や家族から、大腸カメラでポリープをとったという話を聞いたことがあると思います。小さいポリープ(いわゆる腺腫)は、ほとんどが良性ですが、一部のポリープは、長い年月をかけてがん化するといわれています。そのため、小さいうちにポリープを切除することも大事です。

大腸がんの内視鏡治療後や外科治療後は、少なくとも5年間は毎年、再発がないことの確認が必要ですので、引き続き大腸カメラを受けてください。

みなさんへメッセージ

私たち、内視鏡看護師はできるかぎり患者さんに寄り添い、前処置のお手伝いをしたり、検査介助として腹部を圧迫したり、少しでも苦痛の緩和に努めています。不明な点、不安に思うことは何でも聞いてください。検査を受ける患者さんの多くは「大丈夫」「苦しくなかった」と言われます。安心して受けてほしいです。

みなさんもこれを機に、あなたとあなたの大切な人のため、ご自身の健康を見つめ直し、大腸がん検診、そして大腸カメラを受けてみませんか。

3月は国際的な「大腸がん啓発月間」です。日本対がん協会は市区町村や民間団体等と連携して啓発活動をおこなっています。

廣山 恵美 (ひろやま えみ)

内視鏡センター看護師・消化器内視鏡技師
新卒より耳鼻科、糖尿病内科病棟で勤務し、2009 年に蘇生会総合病院の内科外来、内視鏡センターに配属となる。2017 年に当院入職。内科外来、内視鏡センターに配属となり、内視鏡看護をもっと深く学びたい思いから、2022 年に消化器内視鏡技師資格を取得する。

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