助産師ができること

2024年01月30日(火曜日)

「出産」から「みとり」まで暮らしによりそう病院を目指して。
今回はその「出産」をサポートする助産師の取り組みを紹介します。

- 4B病棟助産師 中小路 沙織

安心してお産に臨むために

新病院に移転して、産婦人科外来と病棟が一体化したのでスタッフは外来と病棟を行き来します。お産の時や入院した時、外来から関わりのある顔見知りのスタッフがいることで入院生活の不安が少しでも軽減できるようにしました。また、4B病棟は小児科も一緒なので、当院で生まれたお子さんが入院した時には「こんなに大きくなったの!!」とびっくりすることもあります。
産婦人科外来に助産師がいることで、妊婦さんとゆっくりとお話ができたり指導したりすることができます。指導といっても厳しい指導でなく、妊婦さんによりそった指導です。
診察前に妊婦さんのお話を聞いて、医師にうまく伝えることができないような、ちょっとした内容にもよりそい、少しでも妊娠生活やお産の不安を軽減できたらと思っています。
外来にお父さんが同伴された時は、希望があれば一緒にお話をします。一緒に指導を聞いてもらうことでお母さんの心と身体の変化について知ることができます。お母さん自身から「体がしんどい」「なんだかイライラする」などと話しても、「病気じゃないし」「そんなにしんどいの?」などとお父さんは思ってしまうこともあるかもしれません。ですが、助産師からしっかりと妊娠出産時のお母さんの変化について説明することで、お母さんの大変さによりそうための知識を得ることができます。


お産・子育ての今と昔

外来は里帰り出産で受診される方も多く、赤ちゃんのおばあちゃんが付き添われることも少なくありません。その場合も、一緒にお産の流れや退院後の生活のイメージを持ってもらいます。

Q.抱き癖はつきませんか?

赤ちゃんにとって、抱っこは心の栄養です。抱き癖は気にせずどんどん抱っこしてあげましょう。

Q.果汁は与えなくていいですか?

かつて果汁を与えていたのは、ビタミンCが不足がちだったからです。母乳には赤ちゃんに必要な栄養素が入っていますし、今のミルクはビタミンCが添加されているので果汁は与えなくても大丈夫です。

Q.今は断乳ではないんですか?

赤ちゃんがおっぱいをやめることを昔は「断乳」と言いましたが、今は赤ちゃんが自然におっぱいを卒業するという意味で「卒乳」と言います。

お孫さんと関わることでおじいちゃん、おばあちゃんの暮らしにもメリハリがつき、生き甲斐が持ちやすくなるほど赤ちゃんのパワーはすごいといわれています。


2週間健診

昔はお産をして退院したら1か月健診まで診察がありませんでしたが、現在は2週間健診があります。現在は出産した10人に3人程度の割合でマタニティーブルーズが出現するといわれています。産後数日から2週間のうちに、涙が止まらない、イライラする、落ち込んだりするなどのちょっとした精神的な変化が出現します。産後2週間健診では、母子の体調をみるだけでなく精神的な状態もご相談に乗り、産後うつ病への移行がないかなどフォローしています。必要時は他部署と連携をはかり、お母さんと家族を支えるお手伝いをしています。


産後ケア

当院では、産後2か月までの乙訓地区在住の方を対象に、産後ケアを実施しています。少し育児に疲れて休みたい方、産後自宅での支援者が少ないので利用したい方、おっぱいがうまく吸えないので助産師にしっかりみてほしい方など利用の理由は様々です。少しでもお母さんが育児を楽しいと感じ、気持ちが楽になるよう、お手伝いします。


ママのひとりごとノートとベビーフォト

当院の授乳室には「ママのひとりごと」というノートが置いてあります。当院で出産したお母さんが赤ちゃん誕生の喜びや赤ちゃんへのメッセージを自由に書いてもらっています。また、当院で産まれた赤ちゃんで希望があれば、かわいい赤ちゃんの写真を撮影して当院のインスタグラムやフェイスブックなどのSNSで写真を共有しています。「ママのひとりごと」に書いていただいたメッセージを紹介することもあります。
かわいい赤ちゃんの写真に癒やされ、「ママのひとりごと」を読むことで、スタッフの日々の喜びと励ましになっています。

当院で撮影したベビーフォト
旧病院からつづく「ママのひとりごと」ノート

当院公式インスタグラム
アドバンス助産師とは?

当院には7人のアドバンス助産師がいます。助産師免許の他に、助産実践能力が一定水準に達していると客観的に評価されている助産師のことです。日本助産評価機構により認証されています。5年ごとに更新があり、日々の助産業務に従事する中で、社会の要請に応じた経験を積んでいるか、必要な研修を受講しているか、助産に関する知識や技術がブラッシュアップできているかを確認されます。
アドバンス助産師は、自己研鑽を積み、専門的自律能力や実践力のある助産師でより質の高い助産ケアを提供できるとみなされています。安心してご相談ください。みなさまのそばに助産師がいます。

私たちがアドバンス助産師ですなんでも相談してください!
いのちの教育・性教育も助産師の仕事です

先日、小学5年生を対象に「いのちの教育」を当院助産師が実施しました。胎盤や羊水の役割や、お産はお母さんだけが頑張るものでなく、君たちも頑張って生まれてきたということを伝えました。
赤ちゃんの抱っこ体験なども行い、命の大切さを学んでもらいました。

小学校での「いのちの教育」みんな真剣です
お産をサポートする

私が助産師として一番びっくりしたことは、お産に関わった妊婦さんが赤ちゃんの名前に私の名前の一字「沙織」の「沙」を使ってくださったことです。その時のお母さんは「あの時、ずっとさすってくれて、励ましてくれたことが本当に支えになりました」という助産師冥利に尽きる言葉をくださいました。お母さんは陣痛時、世間一般でいう「鼻からスイカが出る」くらいの痛さを経験します。助産師がさすり、さらにお父さんが一緒にお産に参加できるような関わりをしていきます。痛くて辛くてめげている時、産める自信につなげられるサポートをするのが助産師の最大の仕事です。

沐浴を指導しています。一緒に育児を楽しみましょう!

核家族化が進み、少子化の現代において、赤ちゃんを初めて抱っこするのが自分の子どもという人も少なくありません。
今、出産や育児に関する情報収集はSNSやWEBに頼りがちです。インターネット上の情報は膨大で、情報の精度を判断し取捨選択することは難しく、お母さんたちはネガティブな情報ばかりをみて不安に陥ります。また、他のお母さんたちとの交流が少ないために出産や育児のイメージが希薄です。
助産師は、正しい情報を発信して、お母さんたちの不安を解消する必要があります。孤立した子育てにならないように地域を含めた関わりが重要です。当院は助産院や市役所とも連携し、子どもたちやご家族が幸せな生活を送れるように日々努めています。


中小路 沙織 (なかこうじ さおり)

4B 病棟助産師
平成17年看護師として当院入職、産婦人科病棟配属。助産師の職業に魅力を感じ平成21年助産師学校へ。その後5年間横浜の総合病院で助産師として勤務し、平成27年、当院で契約職員として再入職。京都で助産院やこんにちは赤ちゃん事業の訪問を学びながら、令和3年より正職員として働く。
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