人工妊娠中絶をお考えの方へ  ー飲み薬による人工妊娠中絶ができるようになりましたー

2026年07月01日(水曜日)

望まない妊娠を防ぐための避妊方法はいくつもありますがそのいずれもが100%の避妊を達成できるわけではありません。

避妊法について

経口避妊薬(ピル)は排卵をさせないことによる高い避妊効果がありますが、服用し忘れると排卵がおこり妊娠してしまうケースがあります。
子宮内避妊器具(IUD)についてもIUDが子宮内に入ったまま妊娠するケースも稀ながらあります。このため、望まない妊娠が起こってしまった場合や、様々な理由で妊娠の継続ができない場合は人工妊娠中絶を選択することになります。

人工妊娠中絶は母体保護法という法律にのっとって母体保護法指定医師が行います。母体保護法はその名の通り母性の生命健康を保護するための法律です。 

妊娠週数と中絶の方法

中絶の方法は妊娠週数によって異なり、妊娠初期の中絶は手術によるものと内服薬によるものがあり、妊娠中期(妊娠12週~216日までの妊娠)では陣痛を起こして分娩する方法になります。

それぞれの中絶の方法の特徴、副作用などは以下のとおりです。

薬による中絶
対象 妊娠9週0日までの方
方法 2種類の内服薬を順番に服用して人工妊娠中絶を完結させます。
1つ目の薬を指定医師の前で服用してから帰宅。
36~48時間後2つ目の薬を指定医師の前で服用、胎嚢が排出されるまで入院もしくは院内待機。
麻酔 なし
入院 1~3日
2剤目内服後より中絶が完結するまで入院になります。
出血・疼痛 薬を服用後下腹部痛や子宮からの出血があり、痛みは薬で対応します。
副作用 まれに多量出血や子宮内感染があります。
手術による中絶
対象 妊娠11週6日までの方
方法 搔爬(そうは)法と吸引法があります。
掻爬法は鉗子(かんし)などの器具を用いて子宮内容をかきだします。
吸引法は手動もしくは電動の吸引器を用いて子宮内容を吸い出します。
麻酔 静脈麻酔または局所麻酔
入院 1~2日
出血・疼痛 麻酔を行っているため手術中の痛みはありません。麻酔から覚めると痛いことがあります。出血は少量。
副作用 非常にまれに子宮に穴があくことがあります(子宮穿孔)
陣痛を起こして中絶
対象 妊娠12週~21週6日
方法 前日から子宮の入り口を広げる処置(水分を吸って太くなる棒状の頸管拡張剤を使用)を行い、陣痛を起こす薬を腟の中に3時間毎に投与します。流産にならない場合は翌日もう一度繰り返します。
麻酔 なし
入院 数日~1週間まで
出血・疼痛 陣痛の痛みと出産に伴う出血があります。
副作用 稀に胎盤や卵膜が残って出ないことやあり、その場合は掻爬が必要です。
妊娠週数の数え方

妊娠週数の数え方は最終月経がはじまった日を妊娠0週0日として、400日(280日目)が予定日となります。このため妊娠0週~2週の前半はまだ妊娠していない時期になります。
生理不順のある方は最終月経から計算した週数が実際の週数と異なる場合があります。この場合は胎児の大きさ(頭殿長)から妊娠週数を推定し、出産予定日を決めます。

妊娠週数と頭殿長
妊娠週数 8週1日 8週2日 8週3日 8週4日 8週5日 8週6日 9週0日
頭殿長(mm) 13.5~14.4 14.5~15.4 15.5~16.4 16.5~17.4 17.5~18.4 18.5~19.4 19.5~20.4

では、それぞれの中絶の方法について詳しく見ていきましょう。

薬(メフィーゴパック)による中絶について(妊娠9週0日以下の方)

麻酔は使わずに子宮の中にも器具を入れないため、身体への負担は手術にくらべて軽いです。使用するお薬、メフィーゴパックは主に妊娠中絶を目的として処方され、その構成はミフェプリストンとミソプロストールの2種類の薬剤から成り立っています。
ミフェプリストンは妊娠の維持に必要なホルモンであるプロゲステロンの作用を打ち消す働きがあり、ミソプロストールは子宮収縮を促して子宮内容物を排出させる働きがあります。
通常、最初にミフェプリストンを服用し、一定時間(3648時間)経過後にミソプロストールを投与することで効果が発揮されます。安全性の確保のため、必ず母体保護法指定医師の指導の下で使用される必要があり、使用前には事前の診察や説明が行われます。副作用としては、腹痛や出血、吐き気、嘔吐などが報告されているため、体調変化に注意しながら服用します。

まず、診察で子宮の中に妊娠していること(子宮外妊娠ではないこと)を確認し、妊娠の週数が一つ目の薬を服用する日に90日以下(最終月経開始日から数えて63日、もしくは胎児の頭殿長が20㎜以下)であることを確認します。月経不順の方は最終月経から計算した週数が実際の週数と異なる場合があり、超音波検査で胎児の頭殿長を測定して妊娠週数を割り出します。

まず、診察で子宮の中に妊娠していること(子宮外妊娠ではないこと)を確認し、妊娠の週数が一つ目の薬を服用する日に90日以下(最終月経開始日から数えて63日、もしくは胎児の頭殿長が20㎜以下)であることを確認します。月経不順の方は最終月経から計算した週数が実際の週数と異なる場合があり、超音波検査で胎児の頭殿長を測定して妊娠週数を割り出します。

1つ目の薬は外来で母体保護法指定医師の前で服用いただき、その日は帰宅していただきます。稀に1つ目の薬だけで子宮の内容物が出てくる場合があります(120人中2人)。

1つ目の薬を内服して3648時間後に外来に来ていただき、2つ目の薬(ミソプロストール)を母体保護法指定医師の前で服用します。ミソプロストールは口の中で溶かして吸収する薬で、左右の歯茎と頬(ほお)の間に錠剤を2錠ずつはさんで唾液でゆっくりと30分かけて溶かします。30分後錠剤が残っている場合は水と一緒に飲み込んでください。当院では その後人工妊娠中絶が完結するまで入院になり、当日完結すれば日帰り入院、翌日に持ち越すと12日入院になります。

ミソプロストールは世界93か国の国や地域で承認され、使用されている薬で、子宮の入り口を柔らかくして広がりやすくし、子宮筋の収縮(陣痛の小さい版)を促して子宮内の妊娠組織の排出を助けます。

ミソプロストール服用後は6割の人で4時間以内に人工妊娠中絶が達成されます(子宮の中身がぜんぶ出てしまいます)。そのあと、子宮の中に残っているものがないかどうかを超音波検査で確認してから退院になります。

子宮の中身が出るまでに出血と下腹部痛が現れます。特に胎嚢(胎児の入っている袋)が排出される前後には出血量が増え、下腹部痛がひどくなりますので、痛み止めの薬を内服します。 
1つめのミフェプリストンを服用してから2つ目のミソプロストールを服用後24時間以内に人工妊娠中絶が成功する割合は93%と言われています。
2つ目のミソプロストールを服用してから24時間たっても子宮の内容物が排出されない場合は、手術による中絶を選択することになります。
持病のある方や服用している薬がある方は状況によりメフィーゴパックが使用できない場合がありますので、ご相談ください。
また、子宮内に避妊リングや器具が入っている場合はこれを除去してから服用していただくことになります。なお子宮外妊娠や流産にはメフィーゴパックは使用できません。

費用はメフィーゴパックの薬代55,000円に2剤目内服後の入院と処置の費用が加算されるので、入院の長さや追加処置の有無により合計で55,000円+α(80,000円~128,000円)かかります。

手術による中絶について(妊娠11週6日以下の方)

手術は1日入院(日帰り入院)、もしくは12日入院でおこないます。 
子宮の入り口は通常マッチ棒1本くらい通るくらいの細さのため、手術に使用する器械が子宮の中に入るように、手術の前に子宮の入り口(頸管)を広げる処置を行います(頸管拡張処置)。

頸管拡張処置には棒状の頸管拡張剤を手術の数時間前に子宮の入り口に挿入して、からだの水分を吸収することにより頸管拡張剤が膨らむのを利用して数時間かけて頸管をゆっくり拡張する方法(図1)と、麻酔をかけて眠ってしまってから手術の直前に頸管拡張器具により少しずつ頸管を拡張していく方法があります。

頸管が十分開いて子宮の中に器具がはいるようになれば、鉗子や匙で(掻爬法)、もしくは吸引により子宮の内容物の除去を行います。
これらの操作には痛みが伴うため、短時間だけ眠ってしまう麻酔(静脈麻酔)を併用します。
手術の4時間前から飲食はできません。

手術は1日入院(日帰り入院)、もしくは12日入院でおこないます。 
子宮の入り口は通常マッチ棒1本くらい通るくらいの細さのため、手術に使用する器械が子宮の中に入るように、手術の前に子宮の入り口(頸管)を広げる処置を行います(頸管拡張処置)。

麻酔から覚めると多少なりとも痛みがでますので、痛み止めの座薬や注射薬を使用します。
麻酔からしっかりさめるのに24時間ほど要します。日帰り入院の方は診察後退院となりますが、原則として翌日に外来診察に来ていただきます。12日入院の場合は手術の翌日に診察をうけて退院していただきます。

費用は日帰り入院で132,000円、1泊入院では165,000円で入院当日に前払いです。

陣痛を起こして流産することによる中絶(妊娠12週~21週6日までの方)

まず子宮の入り口(頸管)を広げる処置を行います(頸管拡張処置)。
手術による中絶の項で述べたように棒状の頸管拡張剤を子宮の入り口に挿入して、からだの水分を吸収させて頸管をゆっくり拡張させます。

次に子宮の筋肉を収縮させる腟坐剤(ゲメプロスト腟坐剤(プレグランディン腟坐剤))を3時間毎1錠ずつ腟の中に投与します。(飲み薬ではありません) 少しずつ陣痛が強くなり子宮の内容物(胎児、胎盤、卵膜)が排出されると流産は完結します。翌日、診察後退院となります。
ゲメプロスト腟坐剤は1日に5錠しか使用できないため、3時間毎5回使用しても流産にならない場合は、翌日もう一度試みます。

副作用:陣痛の痛みが必発となります。そのほか、嘔気、嘔吐、下痢等の消化器症状、発熱、血圧低下や上昇、発疹、頭痛等が現れる場合があります。

入院:3日~1週間程度の入院が必要です。

妊娠12週以降の中絶は役所に死産届(病院で発行します)を提出し、胎児の埋葬許可証を発行してもらうことが必要です。費用は通常の分娩と同じくらいかかりますが、健康保険の出産育児一時金の支給対象となることがあります。

加藤 淑子 (かとう よしこ)

産婦人科 顧問
産婦人科・周産期センター

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